行方不明の象を探して。その226。

その声は今、急速に消え入り、必死に耐えていた。孤独の最後の告白。地理的な目印であり、はかない瞬間に根拠を与えようとする試み。繰り返し、認めてほしいという願い。最後の主張、必然の前の宣言。人生の終わりを告げる地図上の一点。未完成の思考、不完…

行方不明の象を探して。その225。

そしてその海からモンスターが現れたと同時に海が森に変わり、自分の認識は混乱を極めていると同時に、その意味不明の変化と同化してしまいと思っていた。そして視界がフェードアウトしていった。森と化した公園の砂場に太陽が昇り、お天道様の顔が現れた。…

新しいの出たんで。

アシッド作ってた頃に買いまくってたテクノのレコードを浴びるように聴きながら今はアシッド三昧でございます。小説はどうなったのやら?って感じでまたガーッ曲作っててかなりストックが溜まってきたんで出したのでよろしく。 open.spotify.com

行方不明の象を探して。その224。

田舎とかにでっけぇー畑作ってさー、大麻農業やるんだぁーってのがアクチュアル農業過ぎるので、彼は常にそういうことを考えているに違いないと言った。それ以外に彼を際立たせるものはほとんど何もなかった。夢を語る割には現実的ではない割に法律とかもっ…

行方不明の象を探して。その223。

「いいか、パパの言うとおりにしろ」 「分かりました。これでいい?」 「わかるか?」 「頭おかしいんじゃね?」 「何言ってるんだ?」 「これ以上、牛乳を買うお金はない。お金がないという意味ではなくて、これ以上、牛乳にお金を使うつもりがないという意…

行方不明の象を探して。その222。

彼は賑やかな空港で神経質にそわそわし、答えのない疑問で頭がいっぱいになった。文字通りの意味でも比喩的な意味でも、荷物が彼女の肩に重くのしかかった。事態の切迫感が彼女を苦しめ、彼女があえて明かさない暗黙の理由に煽られた。 ああ、すべてが思い出…

行方不明の象を探して。その221。

冷たい風が冬の日を吹き抜け、街の片隅でブーツがたまらなく好きな男性、つまりは俺は、年がら年中、オナニーに明け暮れ、季節に関係なく心の中でブーツに憧れ続けていた。夜の街は寂しく、暗い路地には微かな灯りが揺れていた。俺はブーツ姿の女性たちが夢…

行方不明の象を探して。その220。

寒々とした冬の日、僕は街を歩いていた。黒いストッキングにブーツを履いた多くの女性たちが、今大流行のスタイルを楽しんでいて、僕はブーツになりたいというよりはその流行や「楽しむ」ことそのものになりたいと思い、お決まりのリビドーの発散方法をして…

行方不明の象を探して。その219。

例のガバっぽいやつアップしたんで。 open.spotify.com ってことで続きです。 これだと全てが気になってしまう。マイホームなんだから怖いなんて思っちゃいけない!という思い。襖の先に何がいるんだろう?と考えてはいけないのに、やっぱり気になってしまう…

未発表曲集と再アップロードのやつアップしたんで。

最近また90年代テクノがマイブームでアシッドやってた頃に買いまくってたアナログを取り出してきて聞いたりしてるんだけど「これ持ってたんだ!」っていうのが多すぎでヤバいんだよね。結構もうレアでヤバ値がついてるやつがすんげー粗末な保存されたりして…

行方不明の象を探して。その218。

夜風が出てきたようだ。西側の窓にかかった白いレースのカーテンが揺れ、その裾が部屋の中へなびいている。僕はその動きを、テーブルに両手を置いた姿勢で、見るとはなしに眺めている。僕はアンモニア臭い公衆便所に一人だった。彼女は二階だ。すでに床につ…

行方不明の象を探して。その217。

あれ以来、家のディティールを思い出すフェチになってしまったと思ったのだが、空き巣フェチになるとしょっちゅう犯罪を繰り返すことになるのだけど、そうはならなかったのが本当に良かったと思う。実際は彼女のスニーカーを盗んできて、それをオカズにはぁ…

行方不明の象を探して。その216。

結局、彼女のスニーカ-を早々と愛撫して嗅いだだけでファックすることはできなかった。ペニスがギンギンにそそり立った状態でその足で学校に行き昼休みの後の授業に出席した。終日ペニスは勃起したままで他人の家に空き巣に入ることは癖になってしまうこと…

行方不明の象を探して。その215。

既存の諸形態が飽和状態に達しているのを救うために様々な技術を求めなくてはという気持ちで人々が頭を悩ましているのは事実である。しかしながら小説とはいかなるものたり得るかを知ろうとする以上はまずその基礎となるものが認識され判別されなくては納得…

行方不明の象を探して。その214。

むしろ救われたい、どんな苦悩に苛まれるのか。僕の人生には何の意味もない。赤土に押し流されるように、キラキラと冷えたミネラルウォーターの香りがする。光の加減なのか、青白い顔を見ながら踵を返した。一体、どうしたんだ?どうしちゃったんだろう?そ…

行方不明の象を探して。その213。

先回りして振り返り、彼女の手を取って握ってみる。声や声が遠ざかると、また夏か沈黙か。鳴るはずの音が、私の体から離れる。川面に広がる無数の煌めく筋が、ひとつひとつ中洲に揚がっていくのを眺めていた。彼はほとんど無言で去っていき、無言に近い音が…

行方不明の象を探して。その212。

「あたしは名声や成功を手に入れて、女たちはあたしを犯そうと必死。あたしに手を出したがる女になんて生まれてこのかた縁がなかった。さあ、何もかも手に入れたい。世界に踏み出していきたい。できる限り遠くまで。言ってること分かる?」 「うん。続けて」…

行方不明の象を探して。その211。

そういう現場があったらしいが、何も覚えていない。何も覚えていないのだ。ただ、濡れた灰色の砂浜を行き交う潮の泡のまぶしい光を延々と見つめている。何もかもが白い。すべてが白く、境界線は壊れてしまった。その日から、僕は欠かさず夢を見るようになっ…

行方不明の象を探して。その210。

煤けた街並みの幻を見ると、太陽は輝き。一片の土地は奇麗に輝いている。それは鋭く燃えていた。路面のまぶしさはグラグラとマッチングしているのだろうか?それとも、まだ夏以降の季節なのだろうか?次の霧のような日差しは爽やかで、暖かな雰囲気に包まれ…

行方不明の象を探して。その209。

「フィルムのトラブルにより上映が中断しています。 お客様にはご迷惑おかけしますが、しばらくお待ちください。別の映画にしないフィルムの交換が終了次第、上映を再開いたします。ご案内申し上げます。フィルムのトラブルにより上映が……」 君はただ別にそ…

行方不明の象を探して。その208。

物語によって沈められた現実感は、別の何かを失ってしまうのだろうか。誰もいないこの部屋に太陽が昇り、僕は自分の部屋をマイルームと呼ぶ。紡ぐ言葉のひとつひとつが、一筋の光のように揺らめいている。 デジタル的なものは一切禁止されていた。入り口でス…

行方不明の象を探して。その207。

彼女には弟がいて、ある晩、典型的なに全財産、100万ほどを盗まれてしまった。突然のことで、働く気にもなれず、ダラダラする生活が続いた。酒を飲んでは空想の世界に入り浸った。弟曰く、酒はね、現実と夢と空想の世界を曖昧にするんだよ。素面だとね、これ…

行方不明の象を探して。その206。

文学の終極をして文学で生き延びる。人が文学に生かされる。彼は自分が語る物語のせいで正気を失ったのであり、その悲劇こそが精神的、社会的な転落の原因となって彼を無用者に仕立てあげることになったのだろう。僕も死ねる。愛子のために今なら死ねる。そ…

行方不明の象を探して。その205。

近所にカーセックスする人間が集まる通称「アオカン公園」というものがある。山を登った先にあるだだっ広い駐車場に車を停めてカーセックスをするのだ。今日も結構な車が止まっている。車を停めると彼女は無言で左右の胸へと手を滑らせた。艶めかしい声が出…

行方不明の象を探して。その204。

彼女は勘のいい女だから、そういうことがわかって、ああいう素振りをしているのだろう。普通の男だったら、あんな風にいかにも高そうな高級車のボンネットに腰をかけて、艶めかしい脚をプラプラさせている女を見たら、襲いたくなるに決まっている。彼女はそ…

今の時代に小説を読むとは?

今の時代に小説を読むとは?ですけどね、書き始めてから読むようになったんでまぁぶっちゃけ小説を読むようになったのは最近ってことなんですけど今ってコンテンツが腐るほどあるじゃないですか?んでなんであえて小説?っつーと元々特に純文学なんて読者は…

行方不明の象を探して。その203。

というかそのハイキング未遂の話を思い出していたら、彼女に鼻を殴られたことなど些細なことだと思えてくるし、彼女をより愛おしく思えてくる。 首都高速に入ると彼女はガムを噛みながら何かを言おうとしていた。多分、不満か何かだろう。どんなに彼女のこと…

小説とAIについて。

芥川賞をとった九段理江「東京都同情塔」なんだけど、アンチテーゼとしてChat GPTを使ったんだなというね、読んでないんだけどね(笑)まぁね、ニュース記事とかも勘違いする人はいるだろうなとは思うんだけどね「芥川賞作品、5パーセントがChat GPTそのまま…

行方不明の象を探して。その202。

というのも、芸術的感性が豊かで、美人でスタイルが良くてファッションセンスが抜群なのは当然として、それだけではないものを偶発的な要素で喚起させるということは滅多にないことで、それは彼女と山登りというほどではないにしても、軽いハイキングコース…

行方不明の象を探して。その201。

調性音楽に耳を飼いならされた奴隷のようなリスナーが平気でこんな便所の落書きレベルのことを書いているのを見て 「世の中アホだらけだ。音楽リスナーも例外じゃないな」 と、ため息をついた。部屋の面々は、黙ってテープを聞いている。彼らは顔をしかめて…