行方不明の象を探して。その240。

「何を待っているのですか?」 「象だよ」 「ここは何階ですか?」 「3階」 「身分証明書をお持ちですか?」 「免許書ならある」 「これに記入し、内容を読んでください。説明は裏面にあります」 「全てはその時の気分で」 「あなたは監視されています。気を…

行方不明の象を探して。その239。

沈黙と沈黙の間にも、言葉を通して、また沈黙と沈黙の間にも、彼の積極的な参加を疑う理由はなかったし、私は彼の献身を実際的で明白なもの、しかも義務的なものだと認識していた。そして、私たちの診察の枠内での沈黙の性質と、診察の枠外での沈黙の性質は…

行方不明の象を探して。その238。

「文化差別?」 敏夫の言葉は、筆を走らせるように現状に疑問を投げかけた。 真実の声は確信に満ちた筆致で、偏見と理解の間に立った。二人の周りでは、都市が息づき、二人の談話を反響させる生きた存在となっていた。話し言葉が歴史の重みを背負い、言葉に…

行方不明の象を探して。その237。

ドアがバタンと閉まった。私はどこにいたのだろう?私はどこにいたのだろう?パートナーが出かけた隙に誰かが入ってきたのだろうか?彼は出かけたのだろうか?私が聞いたのは静寂だったのだろうか、この喧騒、きしみ、軋み、擦れ、ゴボゴボ、モフモフ。お茶…

行方不明の象を探して。その236。

彼は彼女の言葉を繰り返した。 「どういう意味ですか?」 彼はパーソナル・コムピュータ、マイコンなどから彼女にメールを送り、夕食に誘った。そういえば私は子供の頃、息子たちと同じようなことをした覚えはない。彼らの控えめさは際立っている。何の情熱…

行方不明の象を探して。その235。

彼女がグラスを傾けるたびに、ドジョウを肴にして酒を飲むなんていうことをしなければよかったと後悔した。彼女に親身になった結果がドジョウだった。でも柳川鍋はあまりおいしくない。高級料理になってしまったのは現代であえてドジョウを食べる場合、泥抜…

行方不明の象を探して。その234。

大丈夫、一度決めたら問題ないさ。へへ、さあ、もっと理解しよう、この目尻を掘り下げよう。そう、色だ。すみません、おばさん、もう一度お願いします。名前、悩んだんですよ、かわいいじゃないですか。彼女はただのいい子じゃない。彼女はユニークで、場を…

行方不明の象を探して。その233。

男の子: ねぇ、恵子ちゃん、ぼくが手紙書いたんだよ。ぼく、泥ん中の顔して、ギター弾く藤枝くんだよ。へんな話だけど、ときどきぼく、彼のこと考えてたんだ。お隣の女の子、うるさかったね。 女の子: うん、へんだよね。救急車って何分かかるの?赤い虎みた…

新しいの出たので。

新しいの出たのでよろしく。 open.spotify.com

行方不明の象を探して。その232。

光に包まれた庭の中でテカテカジョイスについて、 「あーテカテカしてたなぁー」 っていう、ジョイスの顔がテカテカしていて、日本には脂取り紙ってのがあるから、それでテカテカを取ってあげようっていうところの話の本質はジョイスの顔が特に光に包まれた…

行方不明の象を探して。その231。

彼は利己的だと思ったこともありました。感情はほんの一部の人にしか持たず、彼はほとんど無感覚でした。でも、その少数の人々に対しては、彼は優しくも厳しくもありました。 「私はたくさんの本を読んできた」 と彼は自慢していましたが、AI時代にそういう…

行方不明の象を探して。その230。

恵子、何してるの?満月?見えない。消えた読書灯、書類の詰まったブリーフケース。しょうがないでしょう?もう決まったことだから、うん。桜のつぼみが膨らみ、こちらはもうすぐ春だ。話題は桜の木の人に埋もれている。桜と春の気配、どうしよう。恵子はド…

行方不明の象を探して。その229。

彼はまぶたを大きく開いたままじっとしていて、眼球をぐるぐると回転させた。人間の認識の限界のために象徴的に限定されてはいるが、とらえどころのない「存在」を示しているものは、青黒いコンクリートの壁に囲まれた二間四方の部屋だった。壁の三方には、…

行方不明の象を探して。その228。

かつては取るに足らないと思われていたチェアマンがドアを閉め、階段は暗闇に包まれた。健三はこの突然の夜の中、その日一日の印象を思い出すのに苦労しながらも、唯一はっきりと覚えているのは、店にいた女性のことで、彼女の穏やかな顔は背を向けていた。…

行方不明の象を探して。その227。

豆知識、一番ヤバいというか、消される可能性がある表現というのは「お金」を粗末に扱ったり、お金に関する価値観を無くしてしまうようなものは「消される」んだそうだ。誰もが疑わないお金の価値。それを疑い始めたら社会が崩壊する。簡単なことだね。スワ…

行方不明の象を探して。その226。

その声は今、急速に消え入り、必死に耐えていた。孤独の最後の告白。地理的な目印であり、はかない瞬間に根拠を与えようとする試み。繰り返し、認めてほしいという願い。最後の主張、必然の前の宣言。人生の終わりを告げる地図上の一点。未完成の思考、不完…

行方不明の象を探して。その225。

そしてその海からモンスターが現れたと同時に海が森に変わり、自分の認識は混乱を極めていると同時に、その意味不明の変化と同化してしまいと思っていた。そして視界がフェードアウトしていった。森と化した公園の砂場に太陽が昇り、お天道様の顔が現れた。…

新しいの出たんで。

アシッド作ってた頃に買いまくってたテクノのレコードを浴びるように聴きながら今はアシッド三昧でございます。小説はどうなったのやら?って感じでまたガーッ曲作っててかなりストックが溜まってきたんで出したのでよろしく。 open.spotify.com

行方不明の象を探して。その224。

田舎とかにでっけぇー畑作ってさー、大麻農業やるんだぁーってのがアクチュアル農業過ぎるので、彼は常にそういうことを考えているに違いないと言った。それ以外に彼を際立たせるものはほとんど何もなかった。夢を語る割には現実的ではない割に法律とかもっ…

行方不明の象を探して。その223。

「いいか、パパの言うとおりにしろ」 「分かりました。これでいい?」 「わかるか?」 「頭おかしいんじゃね?」 「何言ってるんだ?」 「これ以上、牛乳を買うお金はない。お金がないという意味ではなくて、これ以上、牛乳にお金を使うつもりがないという意…

行方不明の象を探して。その222。

彼は賑やかな空港で神経質にそわそわし、答えのない疑問で頭がいっぱいになった。文字通りの意味でも比喩的な意味でも、荷物が彼女の肩に重くのしかかった。事態の切迫感が彼女を苦しめ、彼女があえて明かさない暗黙の理由に煽られた。 ああ、すべてが思い出…

行方不明の象を探して。その221。

冷たい風が冬の日を吹き抜け、街の片隅でブーツがたまらなく好きな男性、つまりは俺は、年がら年中、オナニーに明け暮れ、季節に関係なく心の中でブーツに憧れ続けていた。夜の街は寂しく、暗い路地には微かな灯りが揺れていた。俺はブーツ姿の女性たちが夢…

行方不明の象を探して。その220。

寒々とした冬の日、僕は街を歩いていた。黒いストッキングにブーツを履いた多くの女性たちが、今大流行のスタイルを楽しんでいて、僕はブーツになりたいというよりはその流行や「楽しむ」ことそのものになりたいと思い、お決まりのリビドーの発散方法をして…

行方不明の象を探して。その219。

例のガバっぽいやつアップしたんで。 open.spotify.com ってことで続きです。 これだと全てが気になってしまう。マイホームなんだから怖いなんて思っちゃいけない!という思い。襖の先に何がいるんだろう?と考えてはいけないのに、やっぱり気になってしまう…

未発表曲集と再アップロードのやつアップしたんで。

最近また90年代テクノがマイブームでアシッドやってた頃に買いまくってたアナログを取り出してきて聞いたりしてるんだけど「これ持ってたんだ!」っていうのが多すぎでヤバいんだよね。結構もうレアでヤバ値がついてるやつがすんげー粗末な保存されたりして…

行方不明の象を探して。その218。

夜風が出てきたようだ。西側の窓にかかった白いレースのカーテンが揺れ、その裾が部屋の中へなびいている。僕はその動きを、テーブルに両手を置いた姿勢で、見るとはなしに眺めている。僕はアンモニア臭い公衆便所に一人だった。彼女は二階だ。すでに床につ…

行方不明の象を探して。その217。

あれ以来、家のディティールを思い出すフェチになってしまったと思ったのだが、空き巣フェチになるとしょっちゅう犯罪を繰り返すことになるのだけど、そうはならなかったのが本当に良かったと思う。実際は彼女のスニーカーを盗んできて、それをオカズにはぁ…

行方不明の象を探して。その216。

結局、彼女のスニーカ-を早々と愛撫して嗅いだだけでファックすることはできなかった。ペニスがギンギンにそそり立った状態でその足で学校に行き昼休みの後の授業に出席した。終日ペニスは勃起したままで他人の家に空き巣に入ることは癖になってしまうこと…

行方不明の象を探して。その215。

既存の諸形態が飽和状態に達しているのを救うために様々な技術を求めなくてはという気持ちで人々が頭を悩ましているのは事実である。しかしながら小説とはいかなるものたり得るかを知ろうとする以上はまずその基礎となるものが認識され判別されなくては納得…

行方不明の象を探して。その214。

むしろ救われたい、どんな苦悩に苛まれるのか。僕の人生には何の意味もない。赤土に押し流されるように、キラキラと冷えたミネラルウォーターの香りがする。光の加減なのか、青白い顔を見ながら踵を返した。一体、どうしたんだ?どうしちゃったんだろう?そ…