行方不明の象を探して。その203。

というかそのハイキング未遂の話を思い出していたら、彼女に鼻を殴られたことなど些細なことだと思えてくるし、彼女をより愛おしく思えてくる。 首都高速に入ると彼女はガムを噛みながら何かを言おうとしていた。多分、不満か何かだろう。どんなに彼女のこと…

小説とAIについて。

芥川賞をとった九段理江「東京都同情塔」なんだけど、アンチテーゼとしてChat GPTを使ったんだなというね、読んでないんだけどね(笑)まぁね、ニュース記事とかも勘違いする人はいるだろうなとは思うんだけどね「芥川賞作品、5パーセントがChat GPTそのまま…

行方不明の象を探して。その202。

というのも、芸術的感性が豊かで、美人でスタイルが良くてファッションセンスが抜群なのは当然として、それだけではないものを偶発的な要素で喚起させるということは滅多にないことで、それは彼女と山登りというほどではないにしても、軽いハイキングコース…

行方不明の象を探して。その201。

調性音楽に耳を飼いならされた奴隷のようなリスナーが平気でこんな便所の落書きレベルのことを書いているのを見て 「世の中アホだらけだ。音楽リスナーも例外じゃないな」 と、ため息をついた。部屋の面々は、黙ってテープを聞いている。彼らは顔をしかめて…

行方不明の象を探して。その200。

「馬鹿みたい」 と彼女は言いながら、あたくしめの唾液とぶっかけのし過ぎでカピカピになったブーツをトイレットペーパーで拭いている。 「済まなかった。でも鼻を殴ることはないんじゃないか?」 と言った。鼻の骨が折れたかと思っていたが、しばらくして鼻…

新しいの出たので。

去年の11月に作っててアップしてなかったんでよろしく。 open.spotify.com

行方不明の象を探して。その199。

誰にも分からないか?と言われれば「はい、勿論です」と答える。それは自分を助ける表現として。ヤァヤァヤァとの信頼は相互的なものであると思うこともあったが、今はもちょろん、この空間で僕が話せる方法を探している最中だょ。相互的でなくてもかまわな…

AI徒然。

ウォール伝、ですけども、今回は。 YahooニュースでYoshikiがAIについて法整備がどうたらっつーのを言ってるやつがあって「やっぱまぁこういう話がミュージシャンから出てくるよな」と思ったんだけど、まぁYoshikiは著作権のことを主に言ってると思うんだけ…

行方不明の象を探して。その198。

でもそれは頭で気がついているのではなく、様々なイメージと一体化した体がそれを理解しているという体感であって、それは遊園地のアトラクションを頭で理解せず、体感することで楽しむのと同じで、アトラクションがさらなるアトラクションをアトラクトして…

行方不明の象を探して。その197。

「見えるものと見えないものの間で、それが拮抗しあって束縛するから」 「絶望的に抽象的だね」 「フフッ。そうね」 少し早めに会話を終えて散歩に出かけた。買った洋服が邪魔だったので着てきた洋服を捨てて買った洋服に着替えた。顔を捻ると年配の女性がベ…

行方不明の象を探して。その196。

ウォール伝、続きあると思ったらなかったんで象シリーズの続きで。 なぜか、秋の終わりよりも今の方が不安な気持ちになる。なのに、汗が出る、汗じゃなくて、あの温かさ、心が絞り出されるような感じ。苦しいのでもなく、悲しいのでもなく、血を搾り取られて…

久々のウォール伝。その4。

あけおめ!ってことで続きです。 まぁ今言われているChat GPT関連の本とかを読んでてもよく出てくる使いこなせる人が今後重要になるってのもすんげー一時的な話よね。プロンプターが重要になるっつってもプロンプト自体がアルゴリズム的っつーか数値化できる…

久々のウォール伝。その3。

はい、続きです。 あとまぁまたベケットだけど(笑)ベケットの話を映像化したらつまんないわけですよ。あれは文字だから面白いんであってね、そこなんだよね。やっぱ。文字の芸術。文字だから面白い!というものだよね。だからまぁ映像化すれば原作の80パー…

久々のウォール伝。その2。

続きねっていうか思ったほど続きなかったかもな。いや、そのもうあれだよ、クソ仕事がAIのおかげでなくなるやったー!っていう感じにしておきましょうね。AIで置き換わる仕事の一覧表とかエゲつないじゃん?それは無くなるというより解放されるって考えた方…

久々のウォール伝。

いやー年末だねーってことでブログ的なことを書こうと思うんだけど、あれだね、ブログって自分が何をやっていたのか?ってことのメモとかになったりするから結構良いんだけど象シリーズしかアップしてなかったから何をやってたかなぁー?とかって思ったりし…

行方不明の象を探して。その195。

「だからといってボワーンから解放されるわけではないんだけどね」 「だからまぁ終わるまでそれは無限なんじゃないかしら。終わってもそれは続くような気がするけど」 「色々と書いてて思うんだ。いや、何も書けていないんだけどさ、創造ってそういうことな…

行方不明の象を探して。その194。

「前にどこかでお会いしたことがありましたか?」 それは可愛らしい色白の少年だった。中性的な顔つきで、どこか儚さを感じるような哀愁を帯びた美しさがあった。会ったことはないとすぐ答えた。その少年の存在感が考える間も与えないような感じだった。彼は…

行方不明の象を探して。その193。

「まだ出たいって思ってるんでしょ」 と優菜は言った。 「母ちゃんが帰ってきたら、母ちゃん怒るぞ」 憔悴していながらも、優菜へのリベンジが母によってもたらされることを確信していた。 「こんな長い時間、クローゼットに閉じ込めて何が楽しいの?」 と僕…

行方不明の象を探して。その192。

「どうです?、これで一つ奇抜なカクテルでも作ってみたら?僕はさっきちょっとそんな文句をここで口ずさんでみたんです。なぜって、もうこれでたっぷり一時間経ってるんですからね。そうたっぷり一時間です。僕は僕なりに自分に課せられた仕事を早くこなし…

行方不明の象を探して。その191。

ただこう言いたい。純文学がつまらないのではなくて、純文学の括りにされている作品につまらないものが多いというだけだということを。純文学かはともかく飯食って多目的トイレでファックして飯食って酒飲んで寝るというようなものは文学ではないだろう。そ…

行方不明の象を探して。その190。

「なんかでもさ、全く期待もしないでコミットもしないでも思いもよらないときに何かが来るってことはあるよね」 「あるけどそれは現象なんじゃないかしら?もちろんそれはあたしたちが持っているような問題意識、っていうと大げさかもしれないけどね、虚空と…

行方不明の象を探して。その189。

「いいでしょう?サイコーでしょう?」 彼女の声が矢のように飛び込んできて頭の中で響き渡る。 「で、なんだったかしら」 「今日はやめとく?」 その流れで。その動きと同じ。 「あたしもボワーンとしているから。でも今日やめたところで別の日にボワーンと…

行方不明の象を探して。その188。

何枚かのシャツをクリーニング屋に持っていき、何枚かのシャツを持ったまま、銀行に寄って現金を出し、靴屋に寄ってウィンドウショッピングをした。目覚まし時計の電池とUSBメモリを六個買った。必要ないのに。そして冷蔵庫の中の物を全部を全部ひっぱりだし…

長男坊さんへの返信。

長男坊 はじめまして、いつも読んでます! ほんとに最高の小説です。こういうものを評価するための語彙が私の中に存在していない(あるいはこの小説自体がそういうロゴスをあてがう評価から逃れようとしている?←的外れな感想だったらすみません(;∀;))ので…

行方不明の象を探して。その187。

扉は高くて広く、敷居も厚くて重く、縦に4畳ほど敷いてあった。縁のない畳は緑色で新鮮であった。部屋には何もなく、上に小さな机が置いてあるだけであった。ビヤホールの巨大な掛け時計の針はあと五分で三時を指そうとしていた。文字盤の下には二匹のライオ…

行方不明の象を探して。その186。

絶望というのは闇属性だし、ネガティヴな属性のものだろう。良いものだとは思わないが、心の闇から収穫できるものはたくさんある。変な話、そこから養分を得て表現活動に活かしたり何かを書いたり何かを表現できたりするのだろう。ただ観念的にはライト・ワ…

行方不明の象を探して。その185。

「一億年前には」と神奈川新聞に書いてあった。「ここに象がいた」まだ象は現れない。そういえば実家にいるんだった。野暮用で実家に帰ってきていた。でもアパートから遠くないので面倒じゃないのが救いなんだけど、問題はこれなんだよな。何かを書こうと思…

行方不明の象を探して。その184。

平坦な道が待っているわけではないし、かといってもいばらの道を歩んでいるという感覚もない。全ては自発的にやっていることで報酬はそれを掴むこと。それに尽きる。彼の父はよくこう言ったものだ。「お前には根気が無い」でもそれは間違いだ。根気が無いの…

行方不明の象を探して。その183。

じっと映画を観ていると、どうしても自然にその上に置いた鬼滅の刃のフィギュアに目がいってしまい、映画に集中できなくなっていた。でも思えば鬼滅の刃も人間とは何か?を問うような実存的要素がある作品であるし、神という題材はないものの、神なき世界の…

行方不明の象を探して。その182。

もういつの頃か忘れてしまったが、まだこの世で何かを成そうとしていた時に街を歩いていたらScelsiのMichiko HirayamaによるCanti del Capricornoが頭の中で鳴ったのである。その時何を考えていたかは忘れてしまったが、いずれにせよそれは何の実りももたら…