2022-01-01から1年間の記事一覧

行方不明の象を探して。その37。

ロボット的でもありそうじゃない。でいいじゃない。深くないけどね。むしろ浅いのでは?映画のことについて調べていたのに深堀していったらゴシップに行き着いて凄く嫌な気分になったまま、いや、昔だったら 「へぇー映画業界って酷いもんだねぇ」 なんて野…

行方不明の象を探して。その36。

蝶ネクタイを絞めた若い男性が差し出したおしぼり手を拭きながら象に話しかける。僕の頭の中で記憶の円盤が回り始める。象と知り合うそのさらに前へと今回は戻っていく。あの頃は良かったよな。マスターベーションするのにビニ本だの年齢誤魔化してレンタル…

行方不明の象を探して。その35。

「虫唾が走る」 象は一通り指を眺め終えるとそう繰り返した。象がキリンの悪口を言うのは今に始まったことではないし、また実際に酷く憎んでもいた。象の家にしたところで相当な金持ちだったのだけれど、それを指摘する度に象は決まって 「俺のせいじゃない…

行方不明の象を探して。その34。

「金持ちなんてみんなクソ食らえさ」 象はカウンターに両手をついたまま向かって憂鬱そうにパオった。あるいは象のパオった相手は後ろにあるコーヒー牛乳なのかもしれないと思った。我々はカウンターに隣り合って腰かけていたのだし、わざわざ向かってパオる…

行方不明の象を探して。その33。

食料品だっていつも成城石井オンリーというのも能がないってものだ。お魚はもちろん前にも書いたように築地。でもにおいや水が地下鉄の中で漏れないように大きな袋を持っていく。こういう色々なことのこだわりというよりもスノビズムによる時間の浪費という…

行方不明の象を探して。その32。

いや、もういい。もうお腹いっぱいです。ハム?コーヒーはどうだ? と言うと、いや、結構ですと言う。一杯やろうかな。そうすれば、あたしの心は曇り、外から監視している男もいなくなる。それに普通のセックスは本当につまらない。すぐに飽きる。そういうも…

行方不明の象を探して。その31。

この写真は、夕暮れ時に撮ったものです。水平線に二人の人間がいる。おまえは、彼らが他にどこにいるのかと言うかもしれない。おまえって言う言葉を使う小説があるけどイライラするよね。 俺の場合、数学の問題とかでも「解け」とか言われるとなんでお前に命…

行方不明の象を探して。その30。

巨大な覗き窓の中では、繊毛と振動のエネルギッシュな塊が、疲れ知らずで水を叩いているように見えたことだろう。僕は今いる場所に背を向ける決心をし、小さな森に入り、そこでしばらく歩き、そして横になった。一日はほとんど終わっていた。昼の光はほとん…

行方不明の象を探して。その29。

饒舌はアシッドと共にサイケの果てへと境界線を越えたあたりの砂漠に立ち尽くした立ちんぼのような情景だわね。 「じゃあ相対的に僕と話をしよう」 「その「相対的に」とか言うのが似非インテリ臭いのよ。ソーカル事件って知ってるでしょ?所属レコード会社…

行方不明の象を探して。その28。

目の前のことに嫌気が指してきたのだろう。人間の最低限のサイクルすらも拒絶しているように思われる。グワンばってもダメだ。やーめよっとっていうところの「やーめよっと」の感じはちびまる子ちゃんの「何々をやってあーげるの巻」ってことで薪をばら撒こ…

行方不明の象を探して。その27。

あとパイロットウィングスの黒田教官が右翼なのか?ってことだ。パイロットになりたかったりロケットベルトの運用方法に興味があったのに強制的に軍用ヘリの訓練をさせられたわけだからね、そんなの聞いてないよ。俺は平和主義者なんだからね。フロイディア…

行方不明の象を探して。その26。

あいつにリクルートされちゃってさってそれはオルグって言うのでは?ムーの後、ウィニーとせないはい。腰にこの組むかに、今後も有効、ヒアリングの引用の日本アロマちゃん、金流行の可能性もあるという意見、離婚だのガチャの区分変更を組み込もうだの、今…

行方不明の象を探して。その25。

ザナドゥは最初、裸なのに城の入り口が見つからずに、グルっと城を見渡してやっと城の入り口を見つけたと思ったら、トゲトゲのある亀や、禿げたおっさんの一本足が生えたモンスターを回避する六本木にある老舗のクラブだ。 マンシングって何のことか分からな…

行方不明の象を探して。その24。

なんでヨハネは 「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった」 「この言は初めに神と共にあった」 「すべてのものは、これによってできた。できたもののうち、一つとしてこれによらないものはなかった」 「この言に命があった。そしてこの命は…

行方不明の象を探して。その23。

直美とはカジュアルな付き合いをしていた。直美は、ダメージが入ったジーンズに、Off-WhiteのロンTを着ていた。所謂、全身ハイストリートブランドで固めている人間なのだが、独特のファッションセンスがあって、自分は直美のそのファッションセンスと何気な…

行方不明の象を探して。その22。

その後、サクラソウはすべて一度に鼻を擦り、酒臭い耳鼻咽喉科の医者に「鼻を弄り過ぎだ」と怒られる。あの頃の僕らは輝くものの床のようだった。日傘を差した白い象が、額に付けたダチョウの羽の花束をこの隅で縫うように金色の網を張っているし、だってそ…

行方不明の象を探して。その21。

雨の音を聴きながら生活をしていると外が晴れているのを異様に感じるようになる。天気が良いと気分がいいなどというのはマジョリティの言葉の暴力だ。でもそんな僕も良いなと思える天気の良い日はあるから、そんなもの気分次第だということになる。で、ここ…

行方不明の象を探して。その20。

もういいよ!こんなくだらない話!って君が言い出したんだろう!という話になるとキリがなくなる。むしろこんなくだらない話でヒートアップできるほど仲が良いなどと俯瞰できるぐらいがちょうどいいのだ。喧嘩するほど仲がいいということの本質的な仲の良さ…

行方不明の象を探して。その19。

埋もれていた経験が完全な存在感によって蘇り、自分の存在を見失うときに、なぜ自分の中に閉じこもっていてはいけないのだろう?なぜ我々は、現実の感覚や精神的な内容を追い求めるのか。それは、僕たちの内なる流動性が客観化を否定しながら爆発的なエネル…

行方不明の象を探して。その18。

Sukoraの「Tower」の最後の音が空中に消えながらCDが終了しようとしていた。しかし「Tower」に音はほとんど入っていないので、音と音の隙間が分からなくなる。一昔前のCDプレイヤーだったら「Tower」の音よりもCDプレイヤーが止まる音のほうが大きく聞こえる…

タクティクスオウガ・リボーンについて。

今日は象っつーか小説の続きじゃなくて普通のエントリーで。 っつーか小説を放り出してハマっていることが色々な進展を見せ始めて面白くなってるんだけど書くようなことではないので書かないんだよね。別に書けないことをやっているわけじゃないんだけど(笑…

行方不明の象を探して。その17。

地獄村で作品を作り売り込みの為に上京する生活はポリリズムを生み出し気分転換にもなって自分の仕事が軌道に乗っていると確信できた。地獄村に帰り梱包した原稿を送るために郵便局に言ったら局員さんが汗を拭きながら奥の部屋から出てきた。 「こんにちは、…

行方不明の象を探して。その16。

その話の最中、彼は大きな池のある井之頭公園で小倉焼きのなかにバニラアイスクリームが入っている熱いんだか冷たいんだかよく分からないお菓子を食べていた。ボートに乗った直後の楽しい余韻と彼があまりにもさりえなくこの話題を口にしたのとで少しも不安…

行方不明の象を探して。その15。

「先生、音声入らないからもっとリラックスした表情でしゃべりながら作業してもらってもいいですよー」 「タイピングするときに喋ったりしないので」 「あー、それもそうか、集中してるんですもんね。カメラ、もっと手元アップして。いいねぇ、さっきまでの…

行方不明の象を探して。その14。

まあ、巡航してたんだけどね、フレンチフライでブログ更新してこい。隣の車のボスの連中と話をした。ちょっとだけ緊張感があるけど、何も気にすることはない。こいつは俺の妹と結婚したがっていたから、何度もすれ違った。一本道でタバコを吸いながら上へ下…

行方不明の象を探して。その13。

「あなたはそれほどまでにこの空虚さから逃れたいのですか?」 「そうしなければならない」 「あなたがいま脱出することはできないわ」 「そうしなければ、そうしなければいけない」 なにかあてがあってこそ時間は経っていくのであって、ただビール一本の為…

行方不明の象を探して。その12。

梶田光君、凄すぎるよね。数学諦めて本当に良かったと思う。俺ってそこまで突き抜けてない割にやっていることに関して「B級が何頑張ってんだ?」っていう冷めた目があるから真剣にやることはS級にしないと気が済まない。でもさすがに努力でなんとかなる世界…

行方不明の象を探して。その11。

「意思を弱めるということが女性化って聞き捨てならない言葉だな。お前も殺されたいのか?ポイントマンさんよぉ」 無口な少年に殺意を感じ震えが止まらなくなった。次は先生にセラピーを与える番だ。おなかを押さえて苦しそうな顔をした。先生は笑っていた。…

行方不明の象を探して。その10。

続き。 「僕が死ねばいいと思った?」 「少しね」 「本当に少し?」 「・・・忘れたわ」 二人はしばらく黙った。象はまた何かを喋らなければいけないような気がした。 「ねえ、人間は生まれつき不公平に作られてる」 「誰の言葉?」 「ジョン・F・ケネディー…

行方不明の象を探して。その9。

古き良き欲望の朝、海に向かって開いた雨戸、入ってくる風、椰子の葉の重いブラッシング、椰子の葉の重いブラッシングと一緒に入ってくる風、港のイルカの水面や太陽への喘ぎ声。港にいるイルカの音。 象と錦織の山の下で、「ああ」とうめき声をあげました。…