「大丈夫かい?」
「平面にしろと言っただろう」
「出られるかい?」
「出られるっていうより設計ミスだよ。こんなもの」
今思い出したのだが、吐いたのは象で僕ではなかった。僕はひたすら雄たけびをあげていたのだ。象はエンジンを切りダッシュボードの上のダイナマイトの箱をポケットにつっこんでから、おもむろに僕の手を掴んで車の屋根によじ登った。僕たちはフィアットの屋根に並んで腰を下ろしたまま雄たけびをあげ、証拠隠滅のために象がポケットに突っ込んでいたダイナマイトに火をつけて車を爆破させた。
かっこつけることのステレオタイプ。爆破した車を背に爆発にビビることなくドヤ顔をしながら歩くといった類のもの。まだ目の奥が痛い。香港の薬が効いていないか、もしくは痛み止めではなかった可能性がある。その時、象が何を考えていたかは分からない。
何度彼に抱かれたのだろう。ふふ、やりまくったのさ。えっ。僕は自分の頭の中からふいに自分に語りかけてきたハスキーな女の声におどろく。ふふ、赤い紐で、SMプレイをな。だっ、誰?これは何?きっとあんなソファを見ているからヘンになるのだ。僕はいそいでその時分の妄念をかなぐり捨てた。大麻ボカン。オーディオがアクティヴ過ぎるのか。爆破した車の煙を吸ったらラリったということはやっぱり大麻ボカンだ。
「ねえ、俺は血はツイてるよ」
5分ばかり後で象はそう言った。
「香港の薬、平面、廃墟からの崖、エトセトラ。色々あるよね。エトセトラ」
僕は頷いた。
「それにしても派手に車を爆発させたものだな」
「気にするなよ。車は買い戻せるが、エトセトラは金じゃ買えない」
僕は少し呆れて象の子を眺めた。今は基本、日中は公園で生活をしている。家には帰らない。夜はベンチで寝ている。虫に刺されまくるけどね。でも時には楽しいこともある。僕にはみんなと同じように友達がいる。友達の一人は道に立っていて、車に向かって叫んでいる。皆、迷惑していると言っている。
彼女はいつも酔っぱらっている。3年前にゴミ箱から出るところを見たから緑のパンツをはいている。その緑のパンツには触れない方がいい 彼はその緑色のズボンが好きなんだ 。あれは彼の緑色のズボンだ、なぜならサイズが合うからだ。
公園は三角形になっている。長辺が120フィート、一辺が100フィート、もう一辺が60フィートくらい。いや、もっと大きいかも 1日6時間、貝殻を割る。食堂のおじさんたちは、彼女がお腹を空かせたら大きなサンドイッチをくれる。
そして、彼はおそらく彼女のことが好きだった。彼は言った、親切な人。彼は母親と父親と一緒にどこかに住んでいる。彼は奇妙な方法で下を向いている。バルクの香りを嗅ぎ終えると、頭を下げるんだ。僕らは彼をおかしいと思ったものです。でも、彼は僕の友達にサンドイッチをくれるから、頭がおかしいわけがないんだ!彼は公園で寝たりしない。彼はお母さんとお父さんの世話をどこかでしているのです。
もしくはもの凄く魅力的でフェミニンな、女装子などと言われるような、元々女の子っぽい男が女装していたら全くそれは女性のそれよりも女性的なのであって、セックスすることに全く違和感を感じないのだ。ある意味女性より女性的なのは女装子全般に言えることだ。そういう意味では本屋にヘテロセクシャルな官能小説の居場所が無いというのは示唆的過ぎることだろう。
同性愛かバイが時代のスタンダードなのだから、文学も時代のスタンダードを取り入れたのだ。その結果、とてもマイナージャンルとは言えないBLという世界が広がったのであって、しかしながら俺は腐女子のような感覚に近いものをBLに感じてしまうのだ。ゲイだったらゲイバーなどにいってゲイのボーイフレンドを探すのが一番だし、ゲイポルノはネットでいくらでも見れる。
最近はゲーデルが冷蔵庫から殺人ガスが出ているかもしれない。それと同時に最近導入したホワイトノイズマシンからやる気を削ぐ成分が出ているのかもしれないと思って、10億円が目の前の棚にパンパンに詰まっているところを想像した。でも使い道に困るだけで何も嬉しくなかった。もちろん生活に困らないということは良いことだ。嫌なことをやらなくて済むフリーダムはプライスレスだろう。
で、別にその10億は使わなくてもいいわけだからっていうかなんで使わなきゃいけないんだ?俺はその10億を棚にしまっておくことにした。いきなり金をガンガン使うようになっても怪しまれるだけだろう。使う時はなるべく履歴が残らないように大きなものはその10億から使うことにする。でも大きなものを買う予定はない。
10億の価値とはなんだろうか?例えば30年前ぐらいに今ぐらいの音楽のサブスクサービスが10億で手に入れば10億払う人間もいただろう。いや、それを商用に使うとかではなくて個人使用に限るんだけど。でも30年後には月1000円ぐらいで誰でも音楽聞き放題になるんだったら30年待てばいいじゃないかってことじゃないのか。
30年前からしたら今の家庭用PCのスペックなんて化け物みたいなもんだろう。でもそれも30年待てば20万ぐらいで買えるわけだから30年待てばいいだろう。何十年か後には当たり前になっているものに大金を使うのはバカバカしい。でも30年かぁー。長いな。俺は生きているだろうか?
今で言えば瞬間移動マシンが10億で買えたら買うかい?って話だろう。でもそういうのってさ、瞬間移動マシンがあることで生活が変わるしそれを商用利用すればとかって考えると面倒だから書かないんだと思うよ。思考実験ってのはエコノミーにやるべきなのであって。
今のエコノミークラスが30年後にはファーストクラス。というか瞬間ワープ。ルーラの勢いがありすぎるから天井に頭をぶつけるというよりかはテツオに吹き飛ばされた研究者みたいに跡形もない肉の破片になるだろう。
今日は三杯までしかあきまへん。これ以上は飲ませません。ママの取り成しをありがたいとも思わんと、またすぐに無視してガンガン飲んではる。ママさん、我慢強く飲み終わるのを待っとった。ママ、今日泊りたいんやけど。でもあなたのちんぽ、巻貝みたいじゃない。
銭湯に行ったことがあるって威張ってた割にちんぽが巻貝だなんてのは論理的にありえない。論理エラーであります。残念やけど、そらできまへん。ママは断った。巻貝を泊まらせることはママの論理体系の中に含まれていない。あんたはまだご存じないようやね。ここは巻貝ちんぽはお断りやねん。そりゃあんたの言うように巻貝以外にも色々なちんぽがあるよ。でもここは巻貝お断りやねんって。
いや、そういう規則かもしれんがさ、泊まらせてよ。巻貝って別にセックスするわけやないんやからさ。適当にその辺にパーッと敷布団敷いて寝かせてくれるぐらいのことはできるはずやね。俺はそう思うよ。アカン。なんで?分かった、あんたんいうことはそっくりそのまま信じまっせ。巻貝はアカンということやな。せやな。