行方不明の象を探して。その49。

一日3000字書けば数年でプルースト並になるだろう。でも単純なテキスト量を計算すればそうなるかもしれないけど例えば「ひぐらしのなく頃に」だとかテキスト量が多いゲームも含んだら何千万字ってことになるだろうし、そもそもシリーズものという風にジャンルを広げていったら何億字になるだろう。だからプルースト指標は誤りである。

 

まぁ一つの作品でそれだけのテキスト量を誇っているっていうところに関してはまぁアレかもしれないけどでもこれはこうだからそれはいいでしょう。こういうことを書くと

 

「意図的に文章を長くして文字数を稼ごうとしている部分があり」

 

なんてアメリカンスクールの先公に言われたっけ。最近、中国の古典を読み過ぎているせいか「先公」って書くと武将とか皇帝の名前に見えなくもない。

 

でもエンタメ小説にはルールがあるよ。人を楽しませなきゃ。でも純文学なら自由さ。何を書いても小説さっ。エッセイとか「なんとなく思ったこと」ですらも「思ったこと」という制約がある。でも小説は全く思ってもいないことを勝手に誰かに語らせて都合が悪くなったら殺したりしてなかったことにしてくれても全然かまいません。

 


かまいませんという言葉に感じていた違和感はかみつくような感じがしたと言えば正しいのかな。噛みませんというニュアンスに近いはずなのに何かかみついてきそうな感じがするかまいませんという言葉。あなたを噛みますと書いてその男は音で驚かせる類のゾンビになった。

 

問題が起こらない生活なんて誰もが憧れるユートピアと思われるかもしれない。しかしその問題が起こらない凡庸な生活の凡庸さはまるで毎日霞を食べて生きているような、生きた心地のしない感覚を生み出し続けるものなのだ。しかしそこに虚無感もニヒリズムも存在しない。ただ満ち足りた生活があるだけだ。だから俺にとって絶望とはただの概念であり、興味深い概念だとは思うものの、それを味わいたいと思うことは寸分もないようなものである。


「物語はやめてくれ!」


顔のない作家に影響を受けていただけだと思っていたのだが実際は憑りつかれているようなもので、それっぽくなろうものなら「やめてくれ!」という叫びが聞こえる。慟哭、そして。テレホーダイの時代にサンプル画像だけで抜いていたのを思い出した。当時のエロゲーは100万円ぐらいにみえたものだけど、それも10億円事件と同じで30年経てばなんでもフリーさ。


言わばヌキホーダイ。11時まで性欲を我慢する必要が無いわけで。でもそういう制約があったから11時になったらスッキリできる!っていう解放感があったのかもね。解放という言葉を見ると感と打つ前に軍と書きたくなってしまうのは革命家の名残である。


サッカーを辞めた理由をいきなり思い出した。「ハッショーハイホハイホハイホハイホハッショーハイホ」って走ってるときに順番で言えって言われてハッショーは当時通っていた小学校の名前の略だから良いとして「ハイホ」ってなんだ?っていう意味の分からなさに納得がいかなかった俺は「ハイホ」だけ言わなかった。


後に八卦掌を学んだ時に「ハイホ」という歩法の基礎があるのを知ってやはり自分はスポーツよりも武術に向いているのだなと思った。あと基本的に海外のことなんて知らないからグロチェスター領がどうのとかって言われても全くイメージが浮かばないから小説は書けないものだと思っていたのも一つかなと思ったのだった。

 

でも基本的に大体の面白い小説はどうしようもないチンピラみたいなやつが書いてるものが多くて俺には向いているのだとも思った。男と女もそうだけど「お前」もよく小説で使われるのはカフカとかの影響?歌詞がさっぱり聞き取れないラリーズでも「おーまーえーをー」っていうところだけ聞こえるんで歌詞は「お前をなんたらって言っているのだな」としか思えないでしょう?ファインマンさん。

 

「それで襲撃の話なんだけど……」

 

と僕が言いかけた時に象は遮るようにこう言った。

 

「襲撃は成功したともいえるし、成功しなかったとも言える。成功したと言えば成功したし、成功しなかったと言えば成功しなかったとも言える。言わば考え方の問題さ。要するに俺たちは餌にありつくという大義名分を掲げてある種のヒロイズムに憧れていたのさ」

 

「でもちょっと待てよ。キリンは本当に飢えていたんだから、彼にとっては死活問題だったんだろう?でも君はまるで襲撃ごっこのようなモチベーションだったってことだろう?」

 

「パオーン!」

 

と象は象らしい声で凄まじい怒号をあげた。僕は立ちすくんでしまい1ターン動けなくなった。立ちすくんでいる間に象が襲ってこないか心配だったが、象は僕が立ちすくんでいる間に全身をベロベロ舐め始めて、結果的にそれにまた立ちすくむことになって、結果的に2ターン立ちすくむことになった。

 

全身が象の唾液でダラダラになっていた。また象は僕を立ちすくめさせようと

 

「パオーン!」

 

という怒号をあげたが、僕はその際は平気だった。アルゴリズム的に100パーセント立ちすくむことにはなっていなかったのでセーフだった。

 

「君が体中舐めまわすから全身がベトベトになってしまったじゃないか」

 

僕はそう言うと服を脱ぎ棄て全裸になり、砂の上に寝て体を回転させて全身に砂を塗りたくった。象の唾液で砂がくっついたように全身を覆う。

 

「ヘイ、ミスターサンドマン、君の夢を俺にも分けてくれよ」

 

僕は回転したときに一物が砂で擦れる刺激により一物が屹立していた。僕は立ち上がり屹立した一物を象に魅せ

 

「パオーン!」

 

と怒号をあげた。象はそれにより1ターン立ちすくむことになった。僕が立ちすくんだのは凄まじい音量と迫力によるものだったが、象は僕の変態性に唖然としたのかもしれない。僕は立ちすくんでいる象を見てお返しをしてやろうと思い、立ちすくんでいる象の全身を舐めまわした。

 

凄くザラザラしていて口の中は生臭さと泥臭さでいっぱいになった。しかし象は僕の舐めまわしでは立ちすくむことはなかった。なぜなら1ターンの間に象の全身を舐めることは不可能だったので、象は1ターンが終わると僕を払いのけた。

 

「パオーン!」

 

象は相当お怒りのようだった。僕は全裸のまま砂の上を転がった。結果的にさっきよりも全身が砂まみれになった。象が追撃で僕の命を狙ってくるかと思い

 

「もうここまでか」

 

と観念した。そうしたら象は

 

「ヘイ、ミスターサンドマン、君の魔法で俺とキリンの一触即発状態をなんとかしてくれよ」

 

と言った。僕は

 

「魔法は一回しか使えませんよ。願いはそれでよござんすね?」

 

と念を押した。象は

 

「ああ、それでかまわない」

 

と言った。僕は全身打撲になりながらも、身体を引きずりながら立ち上がって、象さんとキリンさんの仲が良くなりますようにと願った。

 

「無料で?」

 

と象は言った。

 

「無料じゃない。そこがややこしいところなんだ」

 

と僕は言って一物を横に振った。

 

「動物園の園長は現代音楽マニアで、そのとき園内でジョン・ケージ とレジャリン・ヒラーのHPSCHDがかかっていたんだ。そして彼は我々にもしそのレコードを擦り切れるまで聴き倒してくれるなら、今回の話はなかったことにしてやるという取引を申し込んできたんだ」

 

象は驚いた様子で

 

「なんでお前がそのこと知ってるんだぜパオーン?それは俺の記憶だぜパオーン」

 

と語尾をメーンのような感じでパオーンに変えてしまったのも、頭がこんがらがったからなんだろう。基本的にお互いラリってたけど、象の体重だとどのくらいの量でラリるのかがよく分かっていなかった気がするけど、まぁどうでもいいや。

 

「でもそれは本当のことなんだぜメーン」

 

僕は屹立した一物を振り回しながら象にそう言った。記憶のマウンティングが成功しているようだった。

 

「じゃあその話の続きは俺がするぜパーオン」

 

「パーオン?」

 

「パオーンの言い間違いだ」

 

象は動揺を隠せないようだった。裸でいる時間が長すぎたせいで、僕はしょっちゅうくしゃみをしていた。マスター爺のことを思い出した。100円やるからマスターベーションを見ろと言って男子中学生に

 

「マスターベーションだ」

 

と言ってマスターベーションを見せていた爺さんだ。ソウルハッカーズ2に出てくるターボ婆みたいなものだろう。怪異だ。怪異。でも中学生は

 

「またあの爺ちゃんだーちんこ擦ってるー」

 

とかっていう反応だったんだろう。でも優等生タイプの人間が

 

「ムムム、これは由々しき事態だ」

 

と思って大人の対応で学校に通報したのだろう。マスター爺という響きはいい。武術や学問を究めた道士や仙人のような感じがある。でもマスターベーション爺だったら、一体、その爺の人生はどうだったのか。というよりもそれまでも軽犯罪で捕まっていたりしたか、あとはボケていたか、夜のしじまって何のことか?

 

しじまって何?って思ったら静寂っていう意味らしいね。文学用語意味分からん。静かな夜で良くないか?夜の静寂が何かを遮るようにして僕と彼女の間を……みたいなのがあったら罰金にしたほうがいいと思う。イライラするなら読まなきゃいいのに。だから読んでないさ。そりゃ。