行方不明の象を探して。その93。

ニルヴァーナもそうだよな。アルバムで聞くとアメリカのポップスだけどブートのライブ盤で聞くとカート・コバーンが無茶なギターソロをやりまくっていてガーガーいっているのが最高にロックだ。5年前にギターをやろうと思った時はこういうブート盤のギターソロのノイズでぐちゃぐちゃになったところだけ切り取ったやつをループさせてたっけな。あれが俺の思うロックだからな。

 

ロッカーとかブルースマンとか大体ダサいだろう。見た目だけ雰囲気を出していて歌いだすとモロに昔のV系の歌い方だったりとか悪寒がするようなギターを弾いたりするもんだから毎回そういうのを聞くと殺したくなる。音波で人を殺せないものか?俺のギターノイズでそういう似非ロックな輩を全員抹殺したい。

 

高柳と阿部薫のセッションはフリージャズというよりロックだろう。それを言うとアルバート・アイラーもロックだよな。マジのフリージャズはロック以上にロックだ。邪魔な歌が無い分、余計に純度が高い。ロックバンドの難点は歌が入ることだ。ギターウルフみたいにマゾンナの叫び声みたいなボーカルとかシャウトだったらそれは最高のロックだけどああいう歌い方をしているロックバンドはいないか、あとはパンクだろう。

 

でもパンクもロックと同じかそれ以上にセルアウトが凄くてデモとかファースト以外聞けたもんじゃないのが多い。怒りを表現しているだのなんだのっていうけど金のことしか頭にないってのはサウンドで出ちゃうからね、完全に食おうとしていない音楽は純度が高いんだ。金は結果論だろう。金が先行しているから音が濁るんだ。

 

ノーウェイヴにしても初期パンクにしてもマジな時期って短いんだよな。それ以降、メジャー化するかバンドが解散するかだもんな。ライトニング・ボルトのライブはいいな。でもアルバムは全然良くない。なんであのRawのドラムがガッシャンガッシャンいっててギターがギャンギャン鳴ってるままにしないのか。ロックはエンジニアだとかマスタリングを経ると本当にダメになるんだな。音が本当の意味で割れちゃいけないから歪んだ音を綺麗にするでしょう。だから耳障りが良くなる。結果的に全く迫力のない音になってしまう。日本のノイズのCDとかを見習うべきだろう。オーディオ機器が壊れても責任取れませんサウンドこそロックだろう。

 

久々にマイブラのファーストを聞いてみたけどやっぱり爆音で聴くと凄いな。あれぞギターサウンドだよ。日本のノイジシャンもエフェクター繋げすぎだけどケヴィン・シールズも繋げすぎだ。まぁそれがロックってことだ。あとはギターアンプに直差しで全部フルテンにするとかね。結局それってノイズってことじゃん。ギターの音が割れるんだから。割れて歪んでめちゃめちゃになる音がかっこいいわけでしょ?ってことはノイズってことだよね。でもピーガーいっているだけじゃなくてちゃんと音楽性があって調性音楽だったりするからロック音楽として成立するんだよね。そこの非音楽と音楽の境を行き来し続ける感じがロックなんじゃないか。

 

音楽的過ぎたらもうそれはパッケージングされた音楽だよね。んで調性音楽だからなんかの焼き増しになったり、とりあえずオリジナルサウンドってのは大体見込めない。調性音楽という監獄から抜け出すにはノイズしかない。それがロックだろう。ギターの歪具合は楽譜として表せないからね。思うに現代音楽というのはそういうベクトルだろう。だからあんなわけのわからない感じになっちゃうんだ。でもそれは必然だよね。出尽くしたクラシック音楽の焼き増しをしてもしょうがないわけだから。

 

そんなわけでロックを始めた俺は起床後に凄まじいダルさを感じ始めていた。ほぼ半日ぐらい薬切れのジャンキーのような状態になっていた。医者が言うには原因はロックにあるのだと言う。ロックを始めたから大量の睡眠導入剤とロックの成分がぶつかって副作用が強く出ているらしい。なるほど、健康になっているということか。セックス・ドラッグ・ロックンロールというより俺はオナニー・メディシン・ロックンロールという感じだが、これはステレオタイプな自己破滅的なロックのイメージをぶち壊すパンキッシュな概念だ。

 

ロックが魂と体を癒すなんてね。じゃあ俺は飛切(村上語。トビキリと読む)健康になろうと思って昔に大量に買ったギター教本やスコアを持ってきてひたすら練習し始めた。相当にストリクトな感じで「ジャガジャーン!」の世界とはわけがちがう。ノイズをかき鳴らすために基礎をやるのだ。運指やらスケールやら、でもスケールは便利だ。とりあえず弾いていればマズくならない音階なわけだから究極の音楽的堕落だろう。

 

一気にロックし始めた俺はウォークマンに俺が思うロックをSpotifyでいれまくった。昔だったら「ロックだぜ!」と思ったらディスクユニオンで大量にCDやレコードを仕入れる必要があったのに今はサブスクで聴き放題だ。サブスクのアーティストへの還元率が驚くほど低いのは有名な話で、俺の音源も塵も積もればで1トラックあたり50回ぐらい再生があれば大体総再生数は10万近くなる。いや、もっとかな。でもストリーミングで金になった額の合計は6000円ぐらい。ディストリビューションサービスの使用料すらも払えない。

 

でも聴く場合には本当に便利だよな。CDやレコを買わない分、湯水の如く機材に金を投入することができる。棚の10憶には手を付けずに中古車が買えるぐらいの値段のギターを購入した。もうこれでロックからは逃れられない。ロックとロックをかけているわけではない。

 

練習は恐ろしく地味だ。ディストーションやリバーブをかけていればそれっぽく聞こえるけどアンプ直差しで練習をするとミスしか目立たなくなる。でもそうでもしないと一向にギターは上手くならない。達者に演奏できる楽器は一つもないけどセンスだけなら自信があるし、超絶ギタリストでも音楽的センスが壊滅的なやつらがいるから安心だ。俺が超絶ギタリストになったら世界中が悶絶するようなギターノイズをかき鳴らせるに違いない。そうなったら真のロックスターだ。

 

ペケペケとちまちまとした地味な練習に耐えられるのは俺が武術をもう3年ぐらいやっているからなんだろうなって思ったわけで。武術は細かい動きを身体が覚えるまでひたすらやり続ける必要がある。目に見えた効果やフィードバックがすぐに出るわけではないからひたすらやり続ける必要がある。でもひたすらやり続けた結果、上達した部分があるから継続すれば上手くなるということを武術が実証してくれた。もちろん師父の教え方が素晴らしいのは言うまでもない。

 

これはフィジカル全般に言えることだ。思い通りにギターをかき鳴らせるなんて一日何十時間練習して数年後にようやく達成可能になるわけで、いかにペケペケを続けるか?ということに尽きる。でも俺は知っている。武術で実証されたのだ。何の効果があるのかさっぱり分からないことでも繰り返し正しいやり方でやっていると身体が覚えてそれが上手くなる。

 

脳で理解していても身体が追い付かない。その追い付かせるというプロセスは物凄く楽しいことで俺の生きがいでもある。そういうのに無縁だったからね。本しか読んでいなかったから。