行方不明の象を探して。その368。

「君は毎回それだね」

 

ジェイムズは笑った。

 

「毎回それって自分が考えていることしか書けないって意味?」

 

「そうじゃなくて。怒るなって。そうカッカするなって」

 

「カッカって?」

 

「ベーコネッグのことだよ」

 

「あらそう?」

 

「でも、アメリカに来たんだから、もっと冒険してみたら?」

 

「デスバレーに挑戦するとか?」

 

「デスバレーでベーコネッグを火無しで焼くとか」

 

「それやってるやついたよ」

 

「フーイェーイ」

 

「なんでいきなり歌い出したの?」

 

俺はフォークでステーキを切りながら言った。ジェイムズは何かを言おうとしたが、その前にウェイトレスがやってきた。一方MOBAでは何かしらのてこ入れが必要だと感じていた。トップにマークスマンが来てトップレーンのキャラを蹂躙し墓石、それでレベルが上がりまくってキル連続。LOLではそんなことは起こらないだろうからやはりLOLのバランスは神がかっているのか。

 

「コーヒーのお代わりは?」

 

「お願いします」

 

俺はオニオンスープが入ったマグカップを差し出した。ウェイトレスは無言でコーヒーを注ぎすぐに立ち去った。ブリンクみたいな速さだった。彼女の髪は少し乱れていて、制服には小さなシミがあった。スムースなクリミナルの香りがした。MOBAのID名は中国語でパン茶宿直を意味します。パン茶宿直を中国語翻訳すると俺のIDになります、と、俺は言った。

 

「そうさ。プリンストンは田舎のように見えて、実はいろんな人間がいる。学者もいれば、旅人もいる。定住しない人たちもね」

 

「モナド的な?」

 

「ノマドじゃなくて?」

 

「モナドもノマドも窓が無い」

 

「モナドワーカーさ。俺はね。少なくとも」

 

今日は寝起きのダルさを振り絞って心療内科に行った後、ステーキをジェイムズと一緒に食べた後、これを書き続けているのでMOBAやったり義務感で終わらせたいファイファンとかをやらずにジュージツした一日を過ごしている。これで充実しているのだ。一般的に充実していればもっと充実しているだろうに。俺はふとステーキハウスのカウンターに座っている男を見た。彼は新聞を広げながらスプーンでオニオンスープをかき混ぜている。その動きは一定でまるで機械のようだった。

 

「彼のような人を、小説に登場させることもできるかもしれない」

 

俺はツイッターでつぶやいた。今はエックス。ともに俺に関係ない。一生あんなのやらないわけで、アカウントは持ってない。

 

「それはいいアイデアだ」

 

ジェイムズは微笑みながらステーキを切りながらツイッターに投降した後、Xに入った。ツイッターは投降したのではない、統合したのだ。またこの誤字系も後に意図的だったということが分からずに直す可能性がある。日本語のうざいどころは治すの場合、ファイファンで言うところのケアル的な意味合いで直すはバイクを直すとか壊れたものを直すとかそういう意味でまともな教育を受けてこなかった俺はそういう違いすら分からずに小説を書き続けていた。

 

夜、俺はまたタイプライターの前に座っていた。さっき見たステーキハウスの光景を思い出しながら、指をゆっくりと早く動かした。

 

 『彼は新聞を広げた。その紙面には・・・書けないことが書かれてた。スプーンはカップの中でゆっくりと回り、その動きは絶えることなく続いていた。彼がコーヒーを口にすることはなかった。ただ、かき混ぜるだけだった。その後にオニオンスープを飲み干した』

 

書いてみるとそれは思ったより悪くなかった。しかしとてもつまらなかった。蓄財の必要性を感じていた。プリンストンじゃなくて北京の話だけど金さえあれば生きられるわけで北京の資金を貯めておくべきだと思っていた。思ったよ。そう。あんなに金を使わなければ良かった。また稼げばいいじゃないか。そういえばさっき隙間で楽しいことをやっているヤンキーがいた。楽しそうだった。小説っぽいが実話だった。実話メリケンサック。

 

金は無理だとしたらやはり最善は中国語の勉強だろう。こんなものを書いている場合ではない。でも書きたいから書くわけで勉強をしたくないならしなければいい。ちなみに中国語で勉強というと辛いことを強いるみたいな意味合いで日本語で言うところの勉強の意味合いは学習的な説明が面倒なのでやめるしよく分からなくなったしこういうのはリズムが必要なので絶えることなく書き続けるためにも書きながら調べたりすることがないようにしよう。

 

ジェームズは一歩後退した。後退した足はまず踵が接地し次に足の側面が地面を擦りながら沈んだ。土埃が舞い上がったがすぐに重力に従って降下しジェイムズの衣の裾の縁に付着した。彼の目は俺の動きを正確に捉えていたがそれを解釈しようとはしていなかった。ただ捉えていただけである。刀とジェイムズの間の距離が縮まる。縮まる距離は目に見える長さとしてではなく空間そのものの圧縮として感じられた。そうだとしてもまた明日起きたときにダルいことを考えるとムーヴを節約したい。

 

結局、面倒くさいから速くするのだ。技を極めようとしたわけではない。空気の密度が増しその圧力が二人の間に生まれる見えない力場を形作っていた。ハミルトンとかあとなんだっけ?力場って色々あると思うけどこれは比喩ね。でも数学も本当に真面目にあれだな、没頭していた時期は実存がどうとか倦怠がどうとか考えなかったな。それだけ没頭できることがあるっていいことだよね。ジェイムズの指が動く。

 

動きは肩の付け根から始まり次に肘が角度を変え最後に手首が捻られた。地下鉄に乗るにしてもタクシー使うにしてもWechatかAlipayが必要になる。でも北京だとなぜか外国人だと使えないとかなんとか、だったらどうやって寮まで行けばいい?不安でしょうがない。という不安が無い。あるのは片付けの面倒くささだけだ。また片付け?って言われてもそのぐらい私の中でドミナントなのが片づけだ。だいぶだいぶん書いているのがまた渡航前だということがバレつつある。

 

だからジェイムズは手首の動きが伝達することをやめて指が緩やかに開かれるようにした。オープンドアポリシーというやつだ。短剣が鞘から滑り出る。刃と刃が交差した。しかし実際は剣での戦いなどなかった。と思う。武術の師匠は剣なんて武器としては使い物にならないと言っていた。それは剣自体が使い物にならないというより槍とか槍とか槍とか他に有効な武器がある中で剣?接触点は刃の中心から左に0.5センチメートルの位置だった。その点は物理的には金属の表面同士が接触しているだけだったが周囲の空間はそこを中心に歪み音が発生した。ゲームのやり過ぎかと思った。

 

ゲーム内の話?剣技が出てくる武侠ゲーム?今年そういうのが出るらしい。楽しみだ。音は高く鋭く短くてかっこいいと彼女は言った。ジェイムズと刺客の間に漂う静寂が一瞬だけ切り裂かれその隙間を埋めるように音が広がりすぐに消えた。刺客の裸体が回転する。回転は重心の変化を最小限に抑えるように計算されていた。腰のひねりがペニスの角度を変えそれが足の裏の接地面に伝わる。かっこいいけど所詮裸だ。裸の王様ならぬ裸の剣客、裸の刺客。地面との接触点は右足の小指の付け根が最初で次に足全体が体重を受け止めた。刀がもう一度振り下ろされる。その角度は先ほどとは異なり、ジェイムズの右脇腹を狙っていた。

 

「君はいつもそれだね」

 

ジェイムズがステーキハウスでそう言っていたことを思い出した。でもあれはダイナーだったのでは?ベーコネッグの話だったのでは?

 

ジェイムズの剣がそれを防ぐ。防御の動きはステーキの胸部の筋肉がわずかに収縮するところから始まった。それが上腕三頭筋に伝わり肘を固定する力として作用した。手首の回転がわずかに刃の軌道をずらしその結果刺客の刀は、もう一回言いなおす、というかその結果刺客の刀はって早口言葉として結構難しくてそのおかげでジェイムズの剣の側面を滑り落ちた。その瞬間火花が散った。

 

火花は一つ一つが独立した光の点として空間に浮かびそれぞれが異なる方向に消えていった。二人の動きは止まらない。刺客の呼吸は速くも遅くもなかった。一定だった。疲れるのが嫌だからね。動きをエコノマイズ。ジェイムズの呼吸も同様に規則的だったがその規則性には微細な揺らぎが含まれていた。揺らぎは昨今ブームの量子揺らぎなどというものではんくて王の年齢によるものかもしれないし刺客の存在が引き起こした緊張によるものかもしれないしなんていうでしょう?

 

「そうじゃないかもしれない」

 

正解です!ピンポーンです。78年のピンポールです。そして67年のピンヘッド。どちらにせよそれは瞬時に消える些細な変化に過ぎなかった。戦いは続く。続く動作は始まりと終わりを持たなかった。こうして長い間そらーをみてーる。歌詞を全部書いたら歌詞だけにカスラックがカスリを取りにきます。合法やくざ。それに比べて刺客は任侠やくざ。動きと動きの間に明確な区切りはなくそれらは無限に繰り返される一連の現象のように見えた。刀が振られ剣がそれを受け止め足が動き空気が揺れる。VRchatで知り合った中国人の女の子は上海出身で日本で語学学校に通った後、大学院に行きながら就活をしているそうで日本語がべらぼうに上手い。