2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧

行方不明の象を探して。その231。

彼は利己的だと思ったこともありました。感情はほんの一部の人にしか持たず、彼はほとんど無感覚でした。でも、その少数の人々に対しては、彼は優しくも厳しくもありました。 「私はたくさんの本を読んできた」 と彼は自慢していましたが、AI時代にそういう…

行方不明の象を探して。その230。

恵子、何してるの?満月?見えない。消えた読書灯、書類の詰まったブリーフケース。しょうがないでしょう?もう決まったことだから、うん。桜のつぼみが膨らみ、こちらはもうすぐ春だ。話題は桜の木の人に埋もれている。桜と春の気配、どうしよう。恵子はド…

行方不明の象を探して。その229。

彼はまぶたを大きく開いたままじっとしていて、眼球をぐるぐると回転させた。人間の認識の限界のために象徴的に限定されてはいるが、とらえどころのない「存在」を示しているものは、青黒いコンクリートの壁に囲まれた二間四方の部屋だった。壁の三方には、…

行方不明の象を探して。その228。

かつては取るに足らないと思われていたチェアマンがドアを閉め、階段は暗闇に包まれた。健三はこの突然の夜の中、その日一日の印象を思い出すのに苦労しながらも、唯一はっきりと覚えているのは、店にいた女性のことで、彼女の穏やかな顔は背を向けていた。…

行方不明の象を探して。その227。

豆知識、一番ヤバいというか、消される可能性がある表現というのは「お金」を粗末に扱ったり、お金に関する価値観を無くしてしまうようなものは「消される」んだそうだ。誰もが疑わないお金の価値。それを疑い始めたら社会が崩壊する。簡単なことだね。スワ…

行方不明の象を探して。その226。

その声は今、急速に消え入り、必死に耐えていた。孤独の最後の告白。地理的な目印であり、はかない瞬間に根拠を与えようとする試み。繰り返し、認めてほしいという願い。最後の主張、必然の前の宣言。人生の終わりを告げる地図上の一点。未完成の思考、不完…

行方不明の象を探して。その225。

そしてその海からモンスターが現れたと同時に海が森に変わり、自分の認識は混乱を極めていると同時に、その意味不明の変化と同化してしまいと思っていた。そして視界がフェードアウトしていった。森と化した公園の砂場に太陽が昇り、お天道様の顔が現れた。…

新しいの出たんで。

アシッド作ってた頃に買いまくってたテクノのレコードを浴びるように聴きながら今はアシッド三昧でございます。小説はどうなったのやら?って感じでまたガーッ曲作っててかなりストックが溜まってきたんで出したのでよろしく。 open.spotify.com

行方不明の象を探して。その224。

田舎とかにでっけぇー畑作ってさー、大麻農業やるんだぁーってのがアクチュアル農業過ぎるので、彼は常にそういうことを考えているに違いないと言った。それ以外に彼を際立たせるものはほとんど何もなかった。夢を語る割には現実的ではない割に法律とかもっ…

行方不明の象を探して。その223。

「いいか、パパの言うとおりにしろ」 「分かりました。これでいい?」 「わかるか?」 「頭おかしいんじゃね?」 「何言ってるんだ?」 「これ以上、牛乳を買うお金はない。お金がないという意味ではなくて、これ以上、牛乳にお金を使うつもりがないという意…

行方不明の象を探して。その222。

彼は賑やかな空港で神経質にそわそわし、答えのない疑問で頭がいっぱいになった。文字通りの意味でも比喩的な意味でも、荷物が彼女の肩に重くのしかかった。事態の切迫感が彼女を苦しめ、彼女があえて明かさない暗黙の理由に煽られた。 ああ、すべてが思い出…

行方不明の象を探して。その221。

冷たい風が冬の日を吹き抜け、街の片隅でブーツがたまらなく好きな男性、つまりは俺は、年がら年中、オナニーに明け暮れ、季節に関係なく心の中でブーツに憧れ続けていた。夜の街は寂しく、暗い路地には微かな灯りが揺れていた。俺はブーツ姿の女性たちが夢…

行方不明の象を探して。その220。

寒々とした冬の日、僕は街を歩いていた。黒いストッキングにブーツを履いた多くの女性たちが、今大流行のスタイルを楽しんでいて、僕はブーツになりたいというよりはその流行や「楽しむ」ことそのものになりたいと思い、お決まりのリビドーの発散方法をして…