行方不明の象を探して。その65。

なんだ仲直りか。松井は魚の腹からナイフを取り出すとアップジョンに切りかかった。リーチが短すぎるな。しかもナイフで切りかかるなんて素人のそれじゃないか。身体が前に出過ぎている。もっと身体を隠さなきゃ。アップジョンはGoGo夕張から譲り受けた人世代前のギロチンハンマーで松井を八つ裂きにしようと思った。

 

暗器という割にはボリューミー過ぎる。デカすぎるわけでもないけど隠せるって感じでもない。松井は魚の腹から色々な武器を物色している。何で行こうか迷っているのだろう。だからアップジョンもギロチンハンマーの準備をした。

 

ボタン式になっている。ボタンを押すとギロチンが鉄球から飛び出すようになっている。キルビル見ればわかる。でもあれは跳ね返されたりちょっとでもミスったら自分の体を斬ることになってしまう。だったらハンマーのままでいいんじゃないか?まぁボタンを押さなければいいだけの話だ。

 

松井は魚の腹から槍を取り出してアップジョンに切りかかった。またダメだな。槍は突くものだろう。ああやって身体を凄くね、アップジョン側に相当乗り込むようにして切りかかるんじゃね、なんかあの仁王とかKoeiのゲームの雑魚キャラみたいな槍の使い方だよな。下手糞なんだな。松井は。アップジョンは槍を簡単に避けた。魚の匂いがした。

 

アップジョンはギロチンハンマーをブンブンと振り回しながら松井をけん制した。松井は見たことのない武器に驚いている様子だったが、また魚の腹から武器を物色していたのでアップジョンは攻撃を待ってあげた。ふざけんな何考えてんだ。 あたしがご飯作ってあげても全然食べてくれないじゃない?魚の声か魚の腹のあたりからそんな声が聞こえた。

 

元気になるにはこれがぴったりだと思うの。魚と対話しているのか。あの魚が生きているとは思えない。魚型のポーチか。でも料理されてるからな。生きてるわけがない。魚から何が出てこようがハンマーで叩き潰すのみだ。GoGo夕張が主人公のお姉チャンバラみたいなゲームがあればいいのになってアップジョンは思っていた。

 

闘いのイメージはまさにあれだ。でもセールで買ったお姉チャンバラはフリーズが多発したので返金してもらった。振り回す武器は場所を考えなきゃいけない。新選組も襲撃の時に柱とかに刀を引っ掛けたりなんかして、でもまぁ新選組は強かったからいいわけだし、新選組がつけた刀傷かどうかも分からないからね。

 

鎖鎌とかの室内運用は?それはもう分銅で練習するしかないよ。外って想定でやり過ぎると室内じゃ不利になるだろう。狭い路地でも使えるようにしないと。武器の使い分けもいいかもしれないけど一つの武器だけにスキルをガン振りするのがお前のロマンだろう?アップジョンのその決意は確固たるものだった。

 

回すところ。鎖鎌で言うところの鎖の部分。でもあれは先がギロチンハンマーぐらいの重さになると回した時に鎖が手に食い込んで痛い。痛いなんてもんじゃない。あれは分銅ぐらいの重さだから鎖で良いんであってハンマーを鎖で振り回すなんて無理だなと思ったから色々な縄を試した。でも手に食い込むことには変わりないから作業用の分厚いグローブをつけて練習した。

 

だったら鎖でも良さそうだと思っても全然コントロールが悪い。綿の縄ぐらいの柔らかさがあったほうがコントロールが効きやすい。標的にハンマーを命中させることが一番重要なわけで、といっても近づかれた時に鎖鎌みたいに例えば武器を鎖でガードするとか、実際にやったことはないけども、ああいうのが縄だと無理になるよな。

 

あれもこれもってのを求めてるとダメだ。pros and consって言うんだっけ。近づかせなければいいわけだし松井みたいにどんな武器を使っても前のめりになるやつが近づく分には武器を使いこなしているやつが間合いを詰めてきているわけじゃなくて武器に振られて身体が引っ張られちゃってるようなやつが近づいてくる分には間合いを取りやすいっていうか後ろに下がればいいわけだからね。

 

松井みたいなやつはハンマーの良い練習台だ。ジェット機の音が煩い。

 

「ビョロビョロシューモモモゴゴブフョー」

 

って音で

 

「ゴー」

 

なんていうシンプルな音じゃない。物理現象なんだから「ゴー」って言えるほどシンプルな音が発生するわけがないわけで。夕張師匠のハンマーは映画用に「ブンブン」という効果音が足されているけど実際は当然あんな音はしない。

 

「友達っていいなぁー本当にいいなぁー」ってマリオで言えばマリオのステージのメロディとかに合わせてそういう替え歌をしていたやつが「親友だ」とかってよく言ってたのにコロコロと態度を変えて距離を取られたりまた親友扱いされたりして、ああいうのも最初から夕張師匠から譲り受けたハンマーで撲殺していればよかったのになって思う。

 

暴力は正義だ。こういう欺瞞的なもの全てに終止符を打てるだろう。でもこのハンマーでロシアの戦争を止められる気がしない。銃の時代だからね。映画ならクルクルって回転させれば銃弾を弾けそうだけどマーヴェルっぽいよな。それって。

 

そういう色々なファンタジックなものに憧れているけど実際に武器を使ってみると本当に難しいし銃弾は弾けないし松井を撲殺するぐらいしかできないのがなんだか歯がゆいっていうか錘痒い。ハンマー痒いって意味ね。

 

松井の間抜けな顔。もうやっちまおうかな。例の蹴りだ。縄の部分を蹴るとやり方は秘密だけどハンマーがびよーんって具合に前に飛び出すんだよね。夕張師匠は中国の黒夫人という人にハンマーを教わったらしい。

 

で、悪役って色々と学んだあとに師匠を殺したるするけど夕張さんは殺さなかったらしい。黒夫人が夕張先生にハンマーの才能を見出しながらもその隠しきれない黒いオーラに気がついていたのか、一瞬の気も許さないって感じだったんだと思うってのがなぜか主人公が全てを知っているっていうタイプの話の書き方。

 

でもこれの場合、最初はコラージュで始まったけどこないだ書いたように今みたいにリアタイで書き足している部分が多くてそのうちもうほんまに俺のオリジナルやって言えるぐらいのものになるんだろうけどノンフィクションも混じっているから「ここはノンフィクションだな」ってバレないように書かないといけない。

 

松井との勝負も夕張師匠の話も限りなくフィクションに近いノンフィクションだ。というかノンフィクションをフィクションっぽくしてる。そうじゃないと俺が殺人罪で捕まってしまうからね。松井は一瞬で絶命した。

 

例の縄を蹴るとびよーんってハンマーが飛ぶ技が顔面に命中して初代バイオハザードのゾンビが体のあたりをショットガンで打ち抜かれているのにも関わらずなぜか頭だけ吹っ飛ぶ感じの吹っ飛び方で凄まじい血飛沫と肉片をまき散らして絶命した。武器がいっぱい出てくる魚の腹を持ち帰ろうと思ったけどFalloutとかじゃないんだし死んだやつの装備をはぎ取るってのもなんだかね、武侠っぽくないだろう?