行方不明の象を探して。その107。

友人とブリッジをし、複雑すぎて写真に収められない過去の写真を共有した後、サークルの関係について、ここではノスタルジーなしで、尊敬される能力のすべてのそれらの質問であなたのクラスの憧れと恐怖と勇気が混在しながらマスタードについて、ここでまた無駄なことを書きたい放題できると思うと記念のオナニーっていうか、「やった!」みたいな感じで良い気分でオナニーしてから書こう!って気になる。愛すべき無駄な書きたい放題。いくらでも書ける。

 

プルーストの野郎は書きたい放題書いて死んだオナニーの王様だ。俺の生活の中にも何かと大嫌いなプルーストが介入してくる感じがする。これが象の言う崩壊を防ぐってことなのか?いや、逆だろう。無駄なことを書いても成立するって分かったら無駄なことを書く奴が増えるだけだろう。オナニーしようと思ったけど、あまりに無駄な描写を書きた過ぎるので無駄な描写をある程度書いたらイカゲームをしよう。

 

象が帰った後でコーラを飲み、熱いシャワーに入って髭を剃った。もう最高過ぎる。小説ならではの無駄な描写。こういう描写がプルースト並に永遠と続くものを書きたいというのが夢なんだから、象にその夢を食われてたまるかってんだ。言葉の浪費を続ける。石鹸もシャンプーもシェービング・クリームも、何もかもがなくなりかけていた。どうだ。最高だろう?ニコルソン・ベイカーみたいなどうでもいいことをミニマルに書き続ける快楽のようなものが皆無な、ただひたすら浪費を続ける文字達。

 

シャワーから出て髪をとかしローションをつけ耳の掃除をした。くぅー!たまらん!これだから書くことがやめられない。無駄無駄無駄。無駄なことを書き続ける。誰も知りたくないことを書き続ける。最高の快楽だ。これの最悪なところは読み手がただ不快なだけで、書き手は楽しくてしょうがないということだ。汚らしいオナニーを見させられているだけで、本当にどうしようもない。

 

そして台所に行って・・・ちょっと待ってくれ。この台所までの余韻を楽しませてくれ。またどうせ台所に行ってロクでもないことをするんだろう?その前にウキウキしながらオナニーしたい。おっさんがつまらない話をしてジャズとかクラシックの蘊蓄を語って、ありもしない適当な作り話をした後に、また酒を飲んで寝て、女と寝てまた蘊蓄語って・・・というのを1000万字、繰り返しなく書くことは可能なんだろうか?

 

色んな蘊蓄おっさんに文章を書かせて応募して良かったやつに対して謝礼を5000円ぐらい払って、そういうのを集めて1000万字書くというのもアリかもしれない。どうでもいいことを書くのは意外と大変だ。日記にしてしまってはプライベート小説になってしまって、書いている自分がつまらなくなってしまう。それじゃあオナニーが成立しない。とりあえずオナニーしてこよう。

 

ふぅぅ・・・激しすぎで慢性的に亀頭が炎症を起こしている。膣イキは絶望的だ。さて、シャワーから出て髪をとかしローションをつけ耳の掃除をした。そして台所に行って残っていたコーヒーを温めなおした。テーブルの向かい側にはもう誰も座ってはいなかった。誰も座ってはいない椅子をじっと眺めていると、自分が小さな子供で、キリコの絵に出てきそうな不思議な見知らぬ街に一人で残されたような気がした。理由はよく分からない。

 

しかしもちろんもう小さな子供ではない。さらなる無駄な一文に快感を覚えた自分は何も考えずにコーヒーをすすり、長い時間をかけてそれを呑んでしまうと、しばらくぼんやりしてから煙草に火をつけた。回転ずしに行って寝た。

 

夕方に起きてコーヒーを淹れ、トーストを焼き、例のバーで適当に時間をつぶした後、数駅先の本屋で、専業作家としてやっていくにはどうしたらいいのか的なハウトゥー本を買いこんで、そのまま帰ろうとしたときにスターバックスがあったので、アメリカーノを頼んでハウトゥー本を読んだ。大体が本屋で衝動買いしたはいいけど、あとでアマゾンで見てみるマーケットプレイスで半額以下で買えるようなものばかりだ。

 

アメリカーノを二杯も飲んだのでカフェインで口がカラカラに乾燥している。ここでミンティアとかで口をリフレッシュしないとデンタタが飼っていたモルボルのような口臭になってしまう。デンタタの話は出てきていたっけ?順番覚えてないから出てきたらそいつがデンタタだ。順番とか整合性とか概念が古いよね。なんで順番とか整合性が必要なの?「だってそういうものでしょう」としか説明できないようなものに納得したことがない。ごまかしが嫌いだからね。

 

そうこうしているうちに象は正確な位置は明かせないが、東京電磁波タワーのある地点から姿を現し始め、一夜にして北へ北へをふくらみ、街の人々が眠っている間に、とうとう公園にまで達した。確か明け方には象の一番北の端は渋谷のスクランブル交差点の上空にかかっていた。それが自由に浮かんで漂っているさまは軽やかで、そして穏やかであった。

 

人々の反応は様々だった。ある人は象を見て「おもしろい」と思ってスマホで撮影していたし、というか大体庶民の反応はオープンワールドに出てくるNPCのように画一的で、みんなスマホで撮影している。それが動画なのか写真なのか、まぁどちらもなんだろうなと思った。

 

象は横断幕を下げていてそれには「作家の道を諦めろ」と書いてある。俺と象の間柄だから親切に象は自分の家に侵入して作家になることを阻止してくれたのだと思っていたが、違ったのかもしれない。自分みたいに作家を目指そうと無謀なことをしている連中全般にドリーム・イーター・キャンペーンをしているのかもしれない。

 

普段道に迷った時ぐらいにしか使わないスマホを取り出した。NPCみたいに象を撮影するためではなくて、獏について調べるためだ。ウィキが出てきたのでそのまま引用すると

 

“獏(ばく)は、中国から日本へ伝わった伝説の生物、幻獣である。人の夢を喰って生きると言われるが、この場合の夢は将来の希望の意味ではなくレム睡眠中にみる夢である。悪夢を見た後に「(この夢を)獏にあげます」と唱えると同じ悪夢を二度と見ずにすむという”

 

もう水掻きがなくなっている手を打ってしまった。手が腫れている。パチン!というよりかはフランジャーがかかったような変な音がした。いや、なるほど!という意味を込めて手を叩くぐらいしか文字的に表現ができないので手を叩いで知らせようと思ったのだ。小説を書きなれている人間ならもっといい方法があったに違いない。ただ手を叩く以外思いつかなかった。