閣下に苦言を呈する。

mimisemi2008-04-14

こんな記事を見つけたんで。

デーモン小暮 ブロガーに「安易な言葉」への注意促す


ミュージシャンであり相撲評論家のデーモン小暮閣下(年齢不詳)が、「言葉を安易に使うこと」について、自身の日記で苦言を呈した。この苦言はブログをやっている人にも向けているもののため、是非見てみると良いかもしれない。閣下の意見は「感性」というものは人それぞれであり、芸能や芸術の分野での好き嫌いは十人十色であるというもの。自分の感性に合わなかった作品があったとしても、それは誰かの不手際や不心得によってそうなったわけではないという。だからこそ、心の中で「自分の趣味と違う」と思ったり、内輪でその話をすることは構わないが、「気に入らない」ということを不特定多数にアピールすることは、「作品や作者に対して大変な侮辱であり、了見の狭い者、程度の低い者のすることだ」という。


だが、コンサート等で結構な金額を払った時に「これしかやらないの?」「そんなミスしでかすのかオマエは?」等の「プロにあるまじき内容」を見せられ不満を持った時はブーイング等で不満の気持ちを示すのは良いのだという。


好き嫌いの問題で批判するのと、明らかに手落ちがある(努力してない)にもかかわらず、高い金取ったため批判されることの違いとでも言えよう。


そして、最後に閣下は「言葉」には思った以上に力があるもので、「安易に思いついた言葉を使用すると、自分にはそんなつもりがなくても相手を傷つけている場合があるので、ブログなんかをやっている者も、注意した方が良いぞ」と注意を促した。

http://news.ameba.jp/weblog/2008/04/12723.html


これを見てあまりに頭に来たっていうほどでもないんだけど、閣下は凄まじい勘違いをされておられるようなので苦言を呈しておこう。


「気に入らない」ということを不特定多数に言うことが作者や作品に対して大変な侮辱である、とのことだけど、これははっきりいって言論弾圧以外の何者でもない。このロジックは基本的に天皇陛下についての文句を言うのが不敬にあたるので、「気に入らない」ということを不特定多数にアピールすることが「侮辱」にあたるのでやるべきではないといった、市民社会にはあってはならないことなわけであって、それはネットだろうが出版物であろうが、何かに対しての意見なり、それが個人的な主観に基づくものであっても自由に言えるということは当然保証されていないといけない。よくテレビタックルとかに出てるダメな評論家が「首相に文句を言うなんて失敬だ!」なんて言ったりするけど、本当にこれって頭の悪い発言だよね。そりゃ人によっては失敬だと思う人もいる。ただ首相のことを良く思わない人もいるわけで、そういった人が「あいつは最悪だ」ということを言えない、もしくは言うのが侮辱に当たるというのならそれはもう言論弾圧ね。


それはブログであろうが言論の自由が保障されているこの世の中では、基本的に本当の意味での侮辱に当たるようなことを書かない限り、それはどんな極端な意見であれ書いていいわけだよね。それはチョムスキーのマニュファクチャリングコンセントに出てくる話だけど、アホなフランス人だかなんだかがアウシュビッツは無かったなんて言ってるやつがいて、まぁこいつは本を出してるんだけど、チョムスキーはこの言論の自由に関して賛成したんだよね。そうしたらメディアなり人々がアホな勘違いをしちゃって、チョムスキーアウシュビッツは無かったということに同意したなんて思ってたらしいんだけど、ここでチョムスキーは繰り返しになるけど、その意見なりなんなりが極論であったとしても、それは出版されるべきであるし弾圧されるべきではないという、フリーダムオブスピーチの重要さを述べていたわけね。


で、ブログで出回る個人的な音楽に対する意見も、それが極端なものであっても、それは注意なんてしなくていいわけ。そいつが言いたいならブログに書けるという状況が保証されていないとダメだし、ようは読み手のリテラシーの問題で、こういう意見に対してこいつは極端に主観的な意見を述べているだけでダメだなって読み手が判断すれば済むだけの話で、書き手が気をつけるべきっていう話ではないんだよ。デリダじゃないけど、一端外に散種されちゃえば、エクリチュールだろうが音楽だろうがそれはもう作家のコントロールなんて効かないわけよ。その作品に対する解釈や感想なんかはもう完全に読者なりリスナーに委ねられるわけで、作家が口出しする領域ではない。


作家が何らかの作品を世に出すってことはそういうことでしょ?世に出した自分の作品に対して何を言われるか分からないのよ。そんなリスクも承知で作家ってのは世に作品を出すわけでしょ?で、それに対して「嫌いだ」っていう人の意見が作品に対して無礼だなんて、なんていう権威的な態度なんだよ!って話よ。作者ってのはオーソリティーですかい?文句も言えない天皇陛下なんですかい?ネットという構造は個人の極めて個人的な意見でも、それがどこかに書き込まれれば、それはもう井戸端会議レベルではなくなるわけで、それは必然的に大きいものから小さいものまで、ブログ的なキャラクターが備わっちゃうわけよ。ようは「俺はこれ好きじゃない」というレベルのことが書かれていても、そういった書き込みが不特定多数に読まれる可能性があるということ自体がすでにブログ的で、それは書き込みであろうがブログであろうが関係ないわけ。ブログ的というか、まぁネット的という意味ね。


で、そこで補足をしておくと、本当の意味での侮辱ってのはどういうことか?っていうと、まぁ侮辱という言葉が正しいかはともかくとして、書いちゃマズイのはデマとか間違った情報ね。彼はYAMAHAの音源だけで音楽を作っているなんて書いちゃって、実はその彼ってのがローランドを使ってたらさ、それはアウトなの。例えが下痢臭くて悪いんだけど、ようは「情報」に関してはアクチュアルなもの以外は書いてはいけないってことね。こういうミスは自分が昔やってたから本当に分かるんだよね。これは絶対ダメ。機材の情報とか、何々のソフトを使っているだとか、そんなのもサンレコだのなんだのっていう、ちゃんとしたソースから得られた情報じゃない限り、それを情報として発信してはダメね。「たぶん
コルグ」じゃダメ。「コルグ」じゃないとダメ。分からなかったら「たぶん」を絶対つけないとダメ。そういう事実に対しては正確じゃ無い限り書いちゃダメ。だってその文章を見ている人間は、それについて分からないんだから、断定されてたらそれを信じちゃうでしょ。


ただ感想に関しては何を書いたっていいんだよ。批判・批評なんてのは突き詰めればその個人の好き嫌いの問題に帰結するわけで、好き嫌いで物事が言えないということは、それがどういうことを意味するのかというと、究極的に言えばそれは何かに対して批判できないということと同じなんだよ。音楽や芸術に対して、まるでマックスウェーバーの言うような、理想的な社会学者としての中立的な視点なんて必要ないし、そんなのを一般人が持つなんて不可能でしょ?閣下の言ってることはつまりはそういうことだ。みんなマックスウェーバーたれ、とパンピーに対して言っている。で、それが出来ないやつは程度が低い人間と言っている。これは暴言だね。はっきりいって世の中の9割ぐらいの人間を敵に回すような発言だよね。で、閣下みたいな作家至上主義みたいな人間にとってはお褒めの言葉はウェルカムなわけでしょ?その人が好き嫌いで判断した結果、それが好きと言うことを不特定多数にアピールすることは良いことなんだよね。ファンが不特定多数に「閣下最高!」って言うことに対しては、その感想が好き嫌いのレベルで言われていてもいいわけだ。これじゃあまるで独裁政治だよね。中国共産党万歳!とはいくらでも言えるけど、糞食らえ!とかチベットを解放しろ!とは言えないし、ましてや北京オリンピックを中止せよ!とも言えない。言う人間は了見が狭い人間ってことになっちゃう。


まぁ何が言いたいのかというと、こういう作り手に見られる作家至上主義というか権威主義みたいなのが俺は大嫌いなんだよね。作家に対しての侮辱だなんていう構造が成り立つのは、その作家というのが一般人より高いレベルにいるという意識の元で成り立つものだよね。何を言ってるんだ?作り手なんてただの作り手なわけで、立場的にはパンピーと一緒だろう?芸能人もそうだけどね。芸能人ってだけで偉いみたいな意識でいるアホ芸能人が本当に多い。あんなのも普通の人間と変わらないし、社会貢献度で言えばあくせく地道に働いている人間のほうがよっぽど高いわけだ。才能なんてことで自惚れるなんてそれこそ程度の低い人間がやることなんだよ。才能があったってそれは本質的にはパンピーと変わらないわけよ。ようは人間の素晴らしさとか崇高さみたいなのを才能を基準に考えるなんてのは極めて馬鹿げた考えだってことね。俺はそんなことより人徳だとか優しさのほうがよっぽど重要だと思っているわけ。馬鹿だけど凄い優しくてピュアなやつと、頭はずば抜けていいけど性格が捻じ曲がってるやつだったら、俺にとっては前者のほうが人間的に上なわけね。だからそれは前のホセの時に書いたでしょ?俺はホセよりかは物知りかもしれないし、英語も出来るかもしれないけど、人間的にはホセのほうがよっぽど上で、彼の純粋さとか真面目さを目の前にすると自分が凄まじくちっぽけな人間に思えてきちゃうわけだよ。


ホント、馬鹿だよね。作り手は馬鹿が多い。自分の作品を何かの高尚なものと勘違いしてるやつがいる。だからヤクザみたいなJASRACに自分の音楽のケツ持ちをさせるんだよね。むしろ作り手なんてもっと謙虚でいるべきで、作られた何かに対して誰かがそれにお金を払って鑑賞してくれている・・・というだけでもう十分なんだよ。それ以外に求めるものは無いでしょ?なんで作り手が上から目線でパンピーに物事を語るのか、さっぱり分からん。閣下のことは別に好きでも嫌いでもなかったけど、これを機会に嫌いになったね。こんな馬鹿だったとは思わなかった。kissのコピーバンド風情が何を言ってるんだ。全く!パロディで一人前ぶって活動していることこそ「プロにあるまじき内容」なんじゃないのか?

PS。

関係ないけど良い記事を見つけたんで。

http://blog.livedoor.jp/tokyozukananno/archives/50967639.html

こんな限られた情報の中からも、この子の知性の高さとゲームに対する深いこだわりが感じられるってーのは、逆を言えば閣下の少ない言葉からその頭の悪さがうかがい知れるということだね。それにしてもこの子についてはよく分からないけど、相当頭の良い子だね。アイドル=馬鹿というステレオタイプで考えるのは本当に良くないなって思った。ゲーム会社に対してロビー活動をしてほしいぐらいだな。"でないと、ゲーム業界もダメになってしまいます。手抜きのゲームが多くなってきたのは、メーカーさんの責任だけでなく、プレイヤー、消費者の問題でもあると思うのです。"←素晴らしい。これは俺も散々前に書いたようにお笑いにも音楽にも映画にも言えることなんだよ。消費者のレベルが低いと、表現物のレベルも相対的に低くなっちゃうんだよ。馬鹿らしい一発芸だけでテレビに出られるようになるから、ダメ芸人が増えるのと同じね。これは本当に重要なことなんだよ。

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