ロボット的でもありそうじゃない。でいいじゃない。深くないけどね。むしろ浅いのでは?映画のことについて調べていたのに深堀していったらゴシップに行き着いて凄く嫌な気分になったまま、いや、昔だったら
「へぇー映画業界って酷いもんだねぇ」
なんて野次馬的に思っていたはずなのに、今はその不快さが心に突き刺さって気持ち悪くなってくる。寝る前に最悪の気分になってしまった……と思った俺はベッドに横になったのだが、ツルンツルンの質感の犬が横にやってきてお腹を出してきた。触ったら予想をはるかに越える質感でツルンツルンしており、映画界の醜聞などどうでもよくなっていた。
犬だけではない。そういうグルーヴを発している音楽もある。それらのグループは奇妙な様子に見える。グレープがグレープフルーツでぶどうじゃなくてみかんだったってこと。グレープフルーツとドラッグの蜜月。ラブとヘイトの地続き。ダブとエイトは膣好き。集まりを構成する人々のうちの一部がその集まりの中心からそっぽを向いている。なんでそれが分かるのか。神の視点を持った瞬間にサルトルが天から降って来てお前を殺しにやってくるぞ。ヤーヤーヤーと言いながら。
会話が外である緩慢さでときどき途切れながら進行していくあいだ、例えば意識の電子データをアップロードするとか、ハイテク関係の知識を駆使して描かれるSFってのは基本的に著者のリテラシーが半端じゃなくて、この狭い部屋以外のことをあまり書けない俺は何を書いたらいいのかもう悩まなくなった時に、さまざまな広間、廊下、扉などがまるでどこにもいない人々を探し求めて、観念の世界を彷徨っている間に、男と若い女はさらに数歩歩いてちょうど若い女が何かを言う途中で二人の姿は外に出てしまうのを見かけた。
「あなたはいつも実にきれいだ」
その静けさに耐えることができずにまた噴出を求める。しかしそれは偶然性を待つようなもので、気を張っていれば噴出するようなものではない。噴出って噴き出して笑っちゃうみたいだよね。だからさ、その間の退屈を埋めることができずに言葉をむやみに探し続けるんだけど、消える運命にある人間の全ては強度への情熱で完全に夢中になっているなんて言ってみたりなんかして。
それは存在の非常に深いところで言葉だけではなく行為においても社会秩序と文明世界を結びつける関係と法律と週間と道徳を破壊することができる。その上で意識的に理性的に一般的に受け入れられているルールを適応するの。そのルールに縛られるようならただ非創造的にするだけで何の役にも立たない。
「いったい合言葉は何ですか?」
「それがわかっていたらお教えしたいんですが、今日はまだそれを聞くまでにいたってないんですよ」
「気にしないでくださいよ」
「あなたの言葉遣いはあまり気に入りませんね。あなたは自分の言葉に確信をお持ちですか?」
「いや。僕にそうして確信が持てましょうか?それは危険を冒すことですよ」
「黙りたまえ」
なら息子からの手紙を読んであげよう。僕の花嫁は無限だ。彼の姿はとても完璧に見えるし、どうやら彼は満足のいく人生を見つけたようだ。彼の周りにネギが腐ったような、何か漂いながら臭うものないことを願う。それにしてもどこであんなに上手に着こなせるようになったのだろう。どうしてあんなに自信満々で堂々としているのだろう? あんな目に遭ったのに?
「そんなことはありませんわ、でもこの年齢になるとお客さんには慣れてませんからね」
「そんな風に見えないですけどね。お邪魔じゃなかったらいさせていただきますよ。もっとあなたの内面を知りたいと思うので」
「ではこちらへおいてください」
家具の少ない寝室に通された俺は拷問を受けるのかとビクビクしながら水が飲みたかったので、エビアン的なものを探そうとしていたのだが、喉の渇きが癒えることはなかった。喉の渇きが癒えるとは言わない?潤すだろう?
書けるようになるブレスレットの金属アレルギーでできた傷はどうなった?かさぶたになった?ならよかった。何十年億ぶりの、じゃなくて何十億年ぶりのかさぶたじゃなくてアレルギー反応。
隕石の立場からしてみれば何十年億後に俺の腕で金属アレルギーを起こす原因になるなんて思っていなかったわけで、石の立場になるほうが正しいし、何しろ生物として何十億年も先輩なわけだから、いくら上下関係を気にしない気にしないって言ってても億単位だとさ、例えば100万だったらやらないけど億積まれたらさすがにやるってことは結構あるのと同じでさ、先輩ってことになるわけさ。
彼女は愛想のいい、ほとんど社交的な口調で喋る。それからきわめてゆっくりと身をかがめて注意深く煎餅の破片を拾って一つずつ化粧台の上に置いた後に食べたら床の埃がちょっと混じっていて「ペッ」って出した。
数年経って創作の大通路にアストラル体で行くことを許され、巨大な石がサブスタンスの力で音もなく簡単に動いていくのを見て驚いた。思えばあれが隕石だったのかも。それが降ってきたのが加工されて今の俺の腕にある?
ここでは全ての教養を相対化してありふれた常識や科学を安易に受け入れることを拒否して破壊の幻想に殉ずることだけを渇望する。この理由のためだけにあらゆることを学ぼうとする。
破壊=創造。破壊のための知識を一日中学んでは創造に活かそうとして、たとえそれが上手くいかなくても決して挫折することなく、永続的にそれにコミットし続ける。それはつまらない秩序を破壊するもっともよい方法だ。世論を軽蔑し世論が生み出す精神的現象を全て否定する。
「ねえ、舐めてもらえない?そうでないともしかしたらあたし死んじゃう」
死ぬと言われたら舐めるしかない。元々舐めたかった足だ。俺は熱心に親指を舐め続けた。むき出しの脚を愛撫しながらペニスを断続的に擦りつけた。
「今は死んでいくのはあなたよ。ガラスのかけらを飲み込んじゃったかもしれないもの……」
彼は何も言わずに愛撫を続ける。愛撫とマスターベーションの境界線にいるのが彼の立場で、彼女はどんな立場?鏡に映った姿を見て彼はそう思ったのだった。いや、思ったのだったって言われても困るんだけどね。でもそうなんだからしょうがない。
「君の部屋にはガラスの器のなかに女物の靴が片方だけあったっけね」
「その靴を受け取ってください。あなたにした間違いを償うために、差し上げる物が他に何もありませんからね」
だいたいそれは目に見えたのだろうか?壁紙の下にはそれは存在していないのだ。シミが、目に見えることだってある。ゲシュタルトが崩壊していたのか?射精したのかしなかったのか、そのシミをじっと見つめ続けると、もしかしたら誰かが射精した精液の痕なのではないか?と思えるようになってきた。良かった。認識的にレベルアップしてるわ。
「あなたでしたか?」
と彼は言った。
地下の広場は人影が少ない印象を感じたのだが、実際は人で溢れていて、オープンカフェのテーブルを囲むその人影がパネルの表面に貼りつこうとして足掻いでいるように見えた。それが人なのかただの影なのか、とりあえず足掻いている姿は美しいものではなかったので、エントランスを通ってさらに暗いロビーに降りた。
いっぱい書くのは凄いことだと思うけどね、また頭パーンってなっちゃうよ?「また」って言ってもなりかけのことを「また」と呼んで予防的な警告として使うことが多いのを知っていた。あまたじゃなくて頭パーンは警告でもあるけどステップアップでもあるのよ。病気みたいなものでね、一旦そうなってまぁ休みなさいってことなのね。そろそろいいんじゃない?
生態エネルギーを使うと喉が渇くでしょう?太陽に指した水も枯れ始めているわ。そういうビジョンが見えているなら、それはそれでもう完結しているということなのよ。だから自分を一時的に肯定して、またダラダラとした生活に戻るのもまた、クリエイティヴな人間の務めなのよ。
そういうお告げが「チョロチョロ」としか出ないおしっこをしているときに、俺が女神様と呼んでいる方から届いたような気がした。女神様は何でも俺のことを知っていらっしゃる。知っていらっしゃるって言い方がおかしいかもしれない。知ってらっしゃる。敬語の使い方っていう本を買ってきたとする。でも読まないから積読になってまたズボンを失くすような原因を作る本の一つになる。でも別に積読になっている本は読まない本というわけではない。
やることよりもやらないことのほうが勇気がいる。やっているときはやっているドライヴに任せればいいから楽なのだ。やらないというほうがむしろ意識的で精神的に疲れたりもする。でも脱力こそがカギだ。ダラダラとやっていれば何十年と苦痛を感じることなくやっていけるだろう。この持続力こそが力だ。