行方不明の象を探して。その54。

そして輝きの騎士団の子供たちにも、健全な熱病がやってきた。 そして、冥王星から降り立った千数百体のロボットは、静かな星のようにとに回り、助けを求めて運命の父たちのもとへ飛んで行った。 


冥王国の魔法使いは、ロボットの軍隊で囚人を取り込み、谷に向かって歩き出した。そして、奇妙なことが起こった。風が吹いてきて、僕は時代の変わり目のトンネルに閉じ込められた。このトンネルで僕はルームミラーを見つけ、魔法の鏡を通して宇宙酒に酔い、アマゾンに大麻を盗まれ、この頃には月の鹿がアヘンに酔っていると言っていた。なんという恐ろしい豪胆さだろう。母なる自然は昨日から、どこか場違いな場所でピクニックをしている。 

 

そして、神が捨てた棒と、すべての月が微笑んでいた。あなた方全員、そういうことなのよ。結局は。だからみんなで笑ってビールを注ごう。父なる時間を韻に乗せて、時の夜から風が進むように歌を歌おう。コズミックに酔って、マリファナで月がホットケーキに見えた。

 

象の元相棒のキリンは雄である。しかし母キリンはそれを認めようとしなかった。女性として育てたいという願望があったわけではなく、人間がパッとキリンを見たときにその性別が分からないように、母キリンも子供の性別を把握していないようで、なんとなく女の子っぽいところがあるから女の子という体で育てているのだった。

 

元々お金がある家で育ったキリンはオツベルというパトロンに拾ってもらったから金持ちになった象とは対照的に、人間社会の中でキリンとしてやっていくことの難しさから没落していき、最終的に一家離散になってしまい、キリンが食べるものにも困るような貧困に陥ったのも、人間社会がキリンにとってバリアフリーではないことが大きな理由の一つであったのと、キリンの母は料理が上手ではあったものの、首が長すぎたためにテーブルに置いた食事を食べることが出来ずに、日々、衰弱していった。

 

それまでどう母キリンが食事をしていたのかは分からない。キリン用の食事サポート機器があるのかもしれないし、今では何でもオンラインで可能なので、そういったテクノロジーの恩恵を受けていたのかもしれない。しかし結果的に母キリンは衰弱した末に子キリンを残して死んでしまった。父キリンの話は聞いたことがないのでよく分からない。

 

キリンの家が金持ちだったのは親の資産が多かったのか、父キリンの収入が良かったのかは定かではないが、大抵の銀行はキリンが入れないようになっているので、お金があっても引き出すことができないし、カードを取り出すこともできない。キリンがやれることといったら首でシバきあうぐらいしかないので、結果的にキリンは貧困に陥った。キリンの首のシバきあいが嫌なのは血が出たときに

 

「ぶっしゅー」

 

って感じで出るところだ。リーサル感が出てて見てて嫌になる。喧嘩はやめようぜ。ブラザー。人類どころか動物みな友達だよ。そう思っていた友人は信用していた親友に金を持ち逃げされた末に最近では滅多にないヤクザの小競り合いに巻き込まれて流れ弾に当たって死んだ。24歳だった。

 

「ふん、お前はおかまなんだろ」

 

「そうだよ」

 

「いい男を見るとたまらなくなるんだろ、俺にほれ込んじまって俺におかまを掘ってもらいてえんだろ」

 

「そんなことはない。俺はアキラちゃんのような美少年のみを愛する。まだ男性化していない少年。男性化したものに興味はない。それ以上だったらJCかJKか普通の女を選ぶ」

 

「なんだとこのおかま野郎、ぶん殴ってやるからほらこっち来てガード固めてみろ」

 

俺は見えない歩法で男の懐に入り鳩尾に掌底をかました。男は何も気づかずに倒れて気絶した。死んだように動かないので心配になったが、死ぬような一撃ではなかった。

 

どの声に従うのか。だが作家はすべてに従わなければならない。文学はなんでもないものだ。その上で書く作家は何を作るのか。働く人間が作る全てのもの、しかも高度のものだ。一人の作家に何ができるだろうか。すべてだ。彼は鉄柵の中にいる奴隷の身分が彼を圧迫する、しかし書くために自由な瞬間を見出す。そしてそのときにこそ奴隷のない世界、奴隷が主人になって新しい法律を樹立する世界を想像する自由があるのだ。


「仕事」を文字通りに解釈するなら奉仕するべき天命のようなものだろう。お金や社会的地位などは二の次だ。だから仕事はなんでもいいはずだ。ゴミ拾いでもいいしコミュニティサービスでもいいし釣りや泳ぐことを仕事にしてもいいだろう。何しろ「これだ!」ということが大事なのであって、世の中は経済活動=仕事になってしまっているから、お金にならないものが仕事にはならない。もしくはそれは仕事と言わない。

 

でもそれはおかしい。人間がやるべきこと、その個人が与えられた人生の中で成すべきことは人によって違う。だから人間の数=仕事の数のはずである。しかし経済活動によって画一化された仕事は数限られたものになるし、全ての人間が望む仕事にありつくことはできない。条件の良い仕事はすさまじい奪い合いになってしまう。


由香里はじっと俺を見つめたまま笑った。俺の胸に手を押し当てて下に滑らせた。女はこういう動作をどこで覚えるのだろう?と思った。男の場合、大体AVだろう。でも女の場合、どうなんだろう。俺は今すぐこの女を押し倒してその上に乗りかかろうとしないのだろう。そして俺はまず部屋全体をぐるりと見まわし、彼女にこう言った。

 

「さて、君にとって良いニュースと悪いニュースが一つずつある。まず悪いニュース。今から君の足の指を一本一本丁寧に舐めることになった。気の毒だが、それはもう決まっていることだ。変更はきかない。次に良いニュースだ。良いニュースは、舐められるのが左の足の指か右の足か、それを選ぶ自由が君に与えられていることだ」

 

「どの道、両方の足の指を全て舐められることになるので同じことかもしれないが、これが良いニュースであることは確かだ。さあ、どちらにする?十秒のうちに決めてもらいたい。もし自分でどちらか決められなければ、右と左を両方一気に舐めることになる。私はこれから十秒カウントする」

 

「わかりません。でもどちらかをえらばなくちゃならないなら右を選びます」

 

俺は彼女に向かって温かく握手をし、そして言う。

 

「本物の人生にようこそ。ウェルカム・トゥー・リアル・ライフ」

 

彼女は俺の顔を何も言わずにしばらく見つめていた。しして片方の目を細めて微笑んだ。俺はすぐセックスしようとはせずに、自分自身の良心を吟味する。彼女の胸は大きくはなかったが、小さめの乳のほうが好きな自分にとっては好都合だった。というより重苦しく垂れ下がった乳房を見ると醜悪に感じてしまうのだ。会うと言っても彼女の都合で大体夜から夜中になる。次の日に彼女はそのままホテルから仕事に行くことが多かった。