行方不明の象を探して。その89。

新しいので出たんでよろしく。

 

open.spotify.com

 

 

僕は目をつぶって空調機のシューシューいう背景音の中央に自分をおこうとする。空想の中のここは東京の街、この部屋は帝国ホテルの一室。千代田区の外套を歩く自分の姿。吐息をもらして通過する電車のガード下。せまい横町にならぶ赤提灯。薄暗い血かに続く階段。階段が暗い。この廊下は見覚えがない。ここはどこなんだ?鍵は持っていない。

 

楽器の必然性が感じられないギターソロ。ピックアップを楽器として使うならマイクとかコンタクトマイクを使った方がいいのになんでギターを使うのか?ギターの形骸化。トロンボーンやサックスにはピックアップはついていないから特殊奏法みたいなのができない。だから王道を通るしかない。もしくはありがちなジョン・ゾーンあたりが何十年それやってんの?ってな具合の「ブオオオオ」っていうフリージャズのサックスの音。

 

どうせ音楽をやるなら聞いたことが無い音楽を作りたいし聞きたい。でもそんなものはない。楽器の乱用をしてみようか。ギターをちんちんで弾いてみる。これも所詮はピックアップがペニスに当たるだけで「弾いている」ということにはならない。ギターに射精は?コンセプチュアル過ぎるな。「これはギターに射精したときの音を録音したものである」金玉袋小路に陥った現代アートの腐ったようなもんだな。

 

エロ同人誌のセリフとか漫画のセリフの部分をそのまま小説にしちゃえば?やってみたけどつまらねー。オナニーのお手伝いをしてくれるエロボイスを小説にするのもつまらなかったな。外部に出たいのに出れないってのはまるで中学生の皮被りのちんぽみたいなもんだ。リビドーギンギンなのに勃起してるのがバレるのが嫌だから椅子とかノートで陰部を隠す。

 

観客がセンターリングに上がると、表現方法を分断された自称芸術家達がステップを踏み始めた。古いコートのように引き裂かれ、ささくれは痛くなって菌が入った後に腫れるほうが痛くって、この広い世界に取り残され、やり尽くされ、そういえばある男が近づいてきて「このチーズをフルプレートでお願いします」ってオーダーしてたな。でも彼の首を壊すほどの馬もないだろう。

 

いや、君がくれたんだ。あたしが持ってるはずだ。どうしたんですか?ここがその部屋か?見覚えがないのですが。服を脱いで。もちろんです。娼婦は?どうするのか知ってるか?そうだ。セックスしてる。あたしとヤリたい?服を脱いで。

 

女は道路の上手にある白い家でいつもあたしを待っている。蝋燭。ワイン。黒いビーズのついたドレスがマット画のように完璧な女の肌によく映える。なんという白さ。張りきった太腿、蛇の腹のようになめらかでつめたい太腿の上で黒いブーツが鈍く輝く。

 

はるか遠くの木綿シーツの下で僕の両手が動く。そのあと別な感触の眠りへと引き寄せられていく途中でスマホから着信音が聞こえる。

 

「俺の望みを言ってやろうか?」

 

いつになったら教えてくれるんですか?誰が知っていたんですか?今、何時ですか?秘密があるんだ。今日も今日は電話がない。誰かの声が聞こえる。もう長くはないでしょう。何か探しているんですか?そうです。入る気があるのか?はい。隙間を探すんだ。分かったか?はい、分かりました。わかった?隙あらば・・・ですか?そうです。完全に理解しています。よかった理解できてよかったです。それでいい!分かってくれたんですね!

 

黒ずんだ緑色の枠で縁取った白い鉄の扉。プラスチックにひびが入った白い呼び鈴。扉の中心のちょうど顔の高さにある葉書大ののぞき穴の布の角が斜めにめくれ上がり、鎖を外す音、取っ手が回ってまるで一トンもありそうな重々しさで扉が開かれる。かすかに油が焼けた匂い。僕の訪問に備えて石油ストーブに火をつけたばかりなのだろう。

 

「失礼・・・それは何ですか?」

 

昔話です。そしてそのバリエーション。小さな女の子。半ば強制的に産み落とされたようなもの。忘却の彼方。誰にでもあることです。それで・・・僕は?なぜだ僕が一番悪いんです。あれ、どこまで読んだっけ?殺人シーンは・・・ありますか?殺人事件が?ええと、ありません。それは。ストーリーの一部ではありません。違うの?それは違うんじゃないですか?違いますよ。残虐なクソッタレ殺人という感じでしょうか。真夜中過ぎにね。

 

彼女がカーテンの向こうに消えると、一緒に彼女の印象までが急に微かに曖昧になる。僕はこだわる。もう一度ゆっくり息を吸い込み煙草の匂いや男の体臭がしないことを確かめてから煙草に火をつける。

 

誘惑のパノラマ。あなたの声の迷いはすぐにエコーになる。小説の世界の奥底での不安の中にこそ、その隙間から見えてくるものがあります。想像してみてください、物語はあなたのイメージです。あなたが映し出すものに、僕が映り込む幻想なのです。心の感覚は一つ。視覚の記憶で一枚のページ。

 

僕はファンタジーを予言します。軽い雑学と軽佻浮薄なローカル・ベクトル。僕たちの視点。死というスペクタクルについて。分節化はその高貴な耳ざわりを証明するもの。それは大海の中の囁きのように。嵐の中の羽根のように。ヒントは抽象化されたプリズムの中にある。

 

椅子をすすめてくれたとき、ほとんど二メートルも足らず近距離で正面から顔を合わせたはずなのに、こうも印象がぼやけてしまうというのは、なんとも府に落ちない。ヒントを得ても・・・仮にヒントを見ても現象は変わらない。僕も小説を書き始めようとしてからもう四か月経つ。

 

特に意識しなくても見たものの特徴を反射的にとらえ、その場で似顔絵にしてしまいこみ、必要に応じて取り出し、すぐに復元するくらいの技術は持ち合わせている。必至だから習得したのだ。例えばさっきのローラー・スケートの子供なら、上着は切り返しのある幅広の襟のついた紺のラシャ地、スカーフはグレーの毛糸、靴は白で、目尻が下がり髪は固くてまばら、額の生え際はほとんど一直線、鼻の下が赤くただれていた。

 

これは物語のパラダイムに対するあなたの認識を強固なものにするだろう。このような機会を設けているのは、まさに「消去法」なのだから。トランスミッションドライブにうまく乗らないベルトにテンションがかかっているようで、クラッチシャフトのワッシャーが内部を破壊している。トランスミッションの取り付けボルトが緩んでいるので、これがワッシャーの影響かもしれない。

 

クラッチASSYは低速ソレノイドとの接続が切れているようだ。低速ソレノイドとの接続が切れたようだ。トランスミッションブロックのモーター配線を確認するとアジテーターハブは無傷のようだが、よく見るとウィグワグドライブシャフトが使えなくなっているのがわかる。

 

シャフトの一枚一枚は小さいが、アルミのフレームで視界は良好。コンクリート舗装が敷かれた幅10mの舗装を挟んで、正面に見えるのが東2号館の北側の壁。ここには窓がなく、暗く薄汚れた壁に非常階段があるだけで、すぐ下の左側には幹線道路がほぼ見えています。実際にはほとんど見えない。窓の左端から本棚の端まで、車道の視界は丘の手前まで、隣の建物の角線と約30度の角度で交差しているので、歩道からの視界は2号棟の反対側くらいまでしかない。

 

「それをごらんにならなければ、あなたはなにも見なかったも同然ですよ」

 

と太った男は空のシャンパン・グラスを一輪の潮れたハイビスカスの花のそばの、すでに薄汚れたテーブル・クロスの上におきながら話をしているが、一弁の花びらがグラスの台をなすクリスタルの円盤の下に敷かされている。それは海の中のささやき声のように、嵐の中の羽根のように、ヒントは抽象化されたプリズムの中にあった。バスケットドライブが?そうだ、バスケットドライブだ。バナナのようになったスピンチューブのベアリングも壊れてる。リベットがクラッチプーリーと擦れている。

 

あと可能性としてはドレンホースが曲がっている可能性もある。クラッチプレートはもはや機能していない。ウィグワグソレノイドにたどり着ければ。なぜウォッシャーから水が出なかったのかわかるかもしれない。

 

ポンプが詰まっているのは問題だけど、攪拌機もダメでした。なかなかいい感じだからコンピレーションテープを作ろうかな。古い機械に付いているプランジャーは引っ込まなくなることが多い。ということは、小説にも影響が出るということだ。

 

とつぜん背景が変わる。閉ざされた重い幕がゆっくりとレールの上をすべり、次の場景へと遠のいていくとき、小舞台の場面は森のなかの空き地のようなものを表している。登場人物の位置や姿勢は鏡のサロンを飾っている小さな装飾品のコレクションのことだ。