行方不明の象を探して。その220。

寒々とした冬の日、僕は街を歩いていた。黒いストッキングにブーツを履いた多くの女性たちが、今大流行のスタイルを楽しんでいて、僕はブーツになりたいというよりはその流行や「楽しむ」ことそのものになりたいと思い、お決まりのリビドーの発散方法をしても、そのリビドーを維持したいと思ったため、彼女のドレスがたくし上げられ、グレーのアソコが赤いリボンの間からのぞく瞬間、周囲の世界は儚く、異常な幻覚性を帯びた中で通りすがりの人が微笑みながら言った。

 

「言った」ということを節約のためにベケットのように「言った」を無くしてもいいのかもしれないしそうじゃないのかもしれない。なくてもいいしそうじゃないかもしれない節も飽きてきて、俺にとってのネクスト200万字の壁は、思いつかない形容詞によって立ちはだかるのだった。どういう形容詞にすればいかにも立ちはだかったようになるのかな?正解はなさそうだ。んで通りすがりの人が微笑みながら言ったんでしたっけね。あーあ、物語はやめろ!って顔のない作家が言っていたはずなのに!

 

「おや、黒いストッキングとブーツの組み合わせは素敵ね」

 

私は外でのオナニーをやめ、街を楽しむことを決意しました。その後、私たちは大きな岩に座り、天の川を仰ぎ見ました。宇宙の奇妙な景色が広がり、星座のリングから形成された頭蓋穹窿の裂け目が、アストラルな精子と天の小便の光輝く流れとなっていました。

 

「それにしても、ブーツの流行りがあるとは驚きだね」

 

と通行人が微笑みながら言い、もう一人の通行人も

 

「おや、黒いストッキングにブーツが似合ってるよ。」

 

と言いました。「と言いました」にすると絵本っぽくなるけど、ひたすら「ブーツが似合ってるね」しか言わないような絵本みたいなのがあってもいいし、そんなもんAIでいくらでも作れるだろう。AIを恐れる作家もいるが、そもそもAIとは人類の産物なのであって、シンギュラリティもスピリチュアルで言うところのアセンションのプロセスにしか過ぎない。目的はアセンションだ。マスターベーションだ、とマスターじじいは言った。だから100とは言わず500円くれてやった。

 

借金を抱えているマスター爺について話そうかと思ったのだが、

 

「お前のような小男の出番ではない」

 

とかって言われたら嫌なのでやめた。夜が更けても美しい景色は変わらず広がっていた。草むらで伸びをした私の頭蓋骨は大きな岩の上に置かれ、目は天の川を見つめていた。それはアストラルの精子と天の小便の奇妙な裂け目、星座によって形成された頭蓋穹窿の宇宙の裂け目として現れた。雄鶏の鳴き声が響き渡り、枢機卿、赤い色、不協和音の悲鳴と重なった。

 

他の人から見れば、宇宙はまっとうに見えるかもしれないが、私にとっては疑いようもないアセンションの前触れだった。AIに否定的な人間はアセンション出来ない人間、AIに肯定的な人間はアセンションができる人間、などという真実を言い出すとAIとシンギュラリティが教義になっているカルト教団ができそうで

 

「それで小説一本書いてみませんか?」

 

とかって言われても俺は小説が書けないから小説を書き続けているのであって、俺の中から象や「顔のない作家」やカフカやベケットやかわうそやかっぱや吉田戦車やクロウリーや、一年越しだった、ジュンク堂の渋谷店は潰れてしまった。あそこの海外文学のハードカバーの品ぞろえは凄いものがあった。ペーパーバックというか文庫になっているやつはやっぱり売れそうなものが多くて、ハードカバーは売れなさそうなのに出版社が根性で出した!みたいなものが多くて、毎日、違う女性にブーツで責められながら大量のザーメンをブーツにぶちまけたり

 

「今日はオナホールよ」

 

なんて言われてブーツを書かされながらオナホールで責められたりするのが好きっていうかそうなったらいいなぁーって思ってる俺におけるブーツの好きさ加減、ブーツ好きさ度、ストッキングにブーツは抜いていても精子が出そうになる度、ブーツをジロジロと見ると変質者だ!とかって思われるから見ないようにするとさらにエーテル体が目の前に現前するブーツの女性の情報を取って来てしまい、頭はもう大混乱。

 

そのブーツぐらい文学を愛する俺にとって、根性で出したようなハードカバーの今時誰が買うのだろうか?というぐらい高い海外文学を買うのは俺の愉しみなわけで、それだったら人類の9割ぐらいが動画やら他の様々なコンテンツで楽しんでいるという中で、馬鹿みたいに分厚い海外文学を読んでいる俺、かっこいい、なんて思ったりはしないのだが、「よく書いてくれた!ありがとう!」と思うような作品がたまにあるから、文字から快楽を得られる人間にとって、やはり書物というのは高尚であるかポルノであるか、文化的なものなのか、とかそんなことは関係なく、俺は分厚い誰も読まなさそうな本が好きなのだ。

 

海外文学の場合、世界中に色々な言語で翻訳されたりするだろうから、まぁ難解なものでも100万部売れたりするのだろう。でも日本では本が売れなくなっているわけで、それは世界でも同じなのかな?そのうち文字コンテンツがハードコアコンテンツとかって呼ばれるようになったりして、マゾキストしか読まない、なんて思われたら心外だし、俺はブーツも文学も愛するし、例えば少女が寝ていた布団の残り香について永遠と書いてある小説があったとして、有名な小説家だからそんなものは別にググればいいとして、そんなことを書きなぐるべきなのであって、AIとシンギュラリティと人類のアセンションについて、大雑把に書くとこんな感じなんですけど、どうですか?

 

いや、小説になっていませんよ、え?いや、これは小説です。「これは小説です」みたいなタイプの手法もやり尽くされていますよ。自己模倣ですか?ウォール伝の焼き増しを自分でやっているのですか?いや、だってこういうのしか書けないし・・・って藤崎詩織みたいな口調で言ってくださいって散々言ったでしょう?

 

両親が泊まりに来ている時にオナニーをするのは孫になるポテンシャルを秘めた液体を、ただ自分のブーツへの性衝動に任せてティッシュにぶちまけているということの罪悪感からなのか、実家暮らしの時の、一人暮らしとは違う、いつでもオナニーできる環境ではないということを思い出すから嫌なのか、とにかくこんな感じで私の放蕩は、私の身体や思考だけでなく、背景となる広大な星空をも精液で汚した。月の光は、母や姉妹の膣の血や、悪臭を放つ月経と結びついた。私はブーツを悼むことなく愛した。悪夢にうなされたり、地下室に閉じこもったりするのも、女性のブーツを想うからだった。

 

罪滅ぼしというわけではないのだが、タロット占いだけではなく、命式だったかなんだったか忘れたけど、西洋占星術も勉強しているのは広大な星空を精液と倒錯したリビドーで毎晩汚し続けているからだ。文学熱が久々に高まるとリアル書店に言って海外小説を中心に15万円分ぐらいの本を買う。俺が買わなきゃ誰が買うんだ!とかって思ったり、いつかは俺もジャンボになるから全ての金は何百倍になって戻ってくる!って思ったりしながら

 

「お支払いは一括でよろしいですか?」

 

と言われたので、後にリボ払いにすることになっても

 

「俺は小説家だ!」

 

という見栄から

 

「一括払いでお願いします」

 

と、数日後に書店の支払いがカードの支払いの情報として反映されるまで、俺は見栄を切ったまま、寒空の中、見栄を切り続けたので顔面が筋肉痛になり、歌舞伎の白塗りもカピカピになり、カピカピと言えばブルセラで買ったJKとかJDとかコンプラで「ピー」とかの「ピー」にぶっかけたりしてもカピカピになる。

 

ブルセラの商品も分厚いハードカバーの海外文学も、そこまで分厚くない割に元が取れないのか、ボリュームの割にやったら高い海外文学も、全てはリボ払いの暗黒の中に消えてゆく。書店員は俺のコートの袖を引っ張りながら、訝しげな表情を浮かべていた。

 

「本当に一括払いでよろしいのですね?」

 

俺は驚きと戸惑いを交えて彼女を見つめ、口ごもった。

 

「ええ、見栄をはってなどいませんよ。このコートも仕立ての良いものです。私のお気に入りです。」

 

彼女は美人ではなかったが、澄んだ素晴らしい声とふさふさの黒髪をしており、清潔で淫らな喋り方が俺を引き寄せた。彼女は俺の腕を取り、嬉しそうに言った。

 

「本当に?本当に一括でよろしくって?」

 

しかし、俺はこの瞬間は覚えていなかった。「先ほど書店で小便アーンドウンコがしたくなったのでトイレを探していた時に医療関係の本棚ですれ違った、背の低い、インテリっぽい好みのタイプの文系女子の顔が頭をよぎり、そのことについて話そうとしたが、代わりに書店員がセシルのブルースを口ずさんだのだよ」

 

「セシルのブルース?」

 

俺は彼女に聞いた。

 

「君は夜の11時27分過ぎにどうしてこんなところにいるのか知りたいんです。店はとっくに閉店のはずでは?ビルディング全体が閉まっているはずなのに」

 

彼女は微笑みながら答えた。

 

「でも、ここで会おうとおっしゃいましたよね。一昨日、あなたは私にこう言った。そして私はここにいる。それだけなんだ」

 

そして彼女は

 

「胸が張り裂けそうだわ。世界は狂人ばかり」

 

と付け加えた。

 

「君の名前は?」

 

と尋ねた。

 

「もちろん、書店員Aとでも言っておきましょうか。私がいるのが気に障ったのなら... 知らない振りをして」

 

と彼女は言った。

 

「書店員Aだなんてまるで仮想通貨じゃなかった、今流行りのメタバースとかのVR Chatとかにあるアバターの名前みたいじゃないか!いや、そんなのないか」

 

と俺は返した。

 

「先日、私がなぜそのあだ名をつけられたか説明したわよね」

 

と彼女は語り始めた。この語り口はまるで宇宙そのものが紡ぐ幾何学的なエネルギー・フィールドのようなものだった。

 

「エデン、この世界の美しさに驚かない?」

 

俺が尋ねると、彼女はにっこりと微笑んで答えた。

 

「この場所には、私たちの知っている現実を超えた力が満ちているのよ。ここで呼吸することで、私たちは自分たちの存在と向き合えるの。」

 

彼女の言葉に耳を傾けつつ、俺らは未知の力に導かれるままに進んでいった。幾何学的なエネルギー・フィールドは彼らを包み込み、身体のまわりをゆっくりと回転しはじめた。

 

「これがマカバなのか。信じられない光景だな」

 

俺は感嘆の声を漏らすと、彼女はうなずいて言った。

 

「そう、このマカバが私たちを新たな認識の境地へと導くの」

 

回転するマカバは、まるで宇宙を包み込むような美しい幾何学模様を描きながら、俺らを異次元の扉へと誘っていた。それはまさに1万3000年前の知識の再発見であり、未知の領域への探求だった。

 

「このマカバをコンピューターのモニターでディスプレイしてみたらどうだろう?」

 

俺が提案すると、彼女は頷きながら言った。

 

「そうね、それによって他の求道者たちにも、新たな可能性を示すことができるわ。」

 

俺らは新しいページをめくるようにして、マカバの美しい回転をディスプレイに映し出した。それはまるで銀河が赤外線熱に包まれたような、幻想的で神秘的な姿だった。

 

「これが俺の精神世界の深まりの始まりだ。未知の力に導かれ、新たな認識の扉が開かれる。LSDやアワヤスカでさえも、この認識の扉は開けないだろう」

 

俺がそう宣言すると、彼女は微笑みながら応えた。

 

「そう、この精神の旅が私たちにもたらすものは計り知れない。だってネットワークは広大だもの。私たちの意識が情報量に耐えられるかが問題ね」

 

俺はこう答えた。

 

「まさに、インディードだ。インディード過ぎる。だからエーテル体を鍛えなければいけない」