恐るべし!!!!!!!マトリックス!!!!!!!!!!!!!!!

mimisemi2008-10-22

マトリックスは完全な統制された芸術的哲学映画だった。これには驚きだ。というか攻殻機動隊とかと一緒で理解にリテラシーがいるので、リテラシーレベルが低いまま見るとただのSF映画になってしまうんだよね。俺の昔と一緒。攻殻を最初に見たときもわけがわからなかったし、マトリックスに関しては流行っつーのもあったけど、とにかくあのアクションとカンフーにばかり注目しすぎてさっぱり本質を見失っていたし、本質を見抜くほどのリテラシーレベルが無かったわけだ。で、やっぱり俺の勘は当たっていた。何気にあれはマスターピースではなかったのかと。で、改めて見てみたらマスターピースだったと。


簡単な大まかな筋書きを書くと、プラトンの洞窟の比喩から始まり、環境や機関やシステムなどが人間の行動や思想をシェイプしているというような、まぁある意味でマルクス主義というか、ショーペンハウエル的モダン哲学の始まりみたいなのをレペゼンしつつ、ネオという救世主を軸に様々な哲学的モチーフやメタファーを使いながら、救世主が人類のために自分のみを捧げるというメシア的な宗教的帰結に達するっていうね、なんつーかよくここまで壮大なすべてを総括するような映画を作ったよなって感じだよね。プラトンの比喩から始まって、ポストモダン的な、映画の最初にハッキングデータだかのコピーが入っているディスクが隠してあるハードカバーの本がボードリヤールのシミュラクラだったりさ、プリミティブな哲学からデカルト的哲学、原因と結果といったヒュームみたいな哲学からポストモダンまで哲学史を俯瞰したような枠組みになってるのが凄いんだよね。だからこそ理解するのに凄まじいリテラシーレベルを必要とする。ましてや大枠のまた大枠は凄まじく宗教的な世界観だし、俺から言わせればそこには抑圧に抗うレジスタンス達の姿があるという意味で極めて政治的なんだよね。


Zionという明らかにシオンの比喩である場所が聖地になってたりして、そこの救世主がZionを救うなんて結構過激だよね。ナチュラルで人畜無害な救世主の話じゃなくて、凄まじく革命的で過激で武装や暴力を厭わないような革命的主題が見え隠れしているよね。革命的な映画は色々あった。ただ俺の好きな革命映画はチャップリンのモダンタイムスであったり、ラングのメトロポリスであったり、ブニュエルの自由の幻想であったり、アルジェの戦いであったり、割と分かりやすいというか、明らかな革命的コンテキストを含んでいるような映画ばかりだったけど、哲学の全体像みたいなのを包括しつつ、そこに革命性があるっていうような映画でなおかつビジュアル的にはスターウォーズありカンフーありカーチェイスありっていうような飽きさせないような視覚的要素があるっつーのはさ、他に無いよね。こういう俗っぽいフォーマットの中で高度なことをやっているのに好感が持てるというようなのは昨日も書いたけど、あれなんだよ、マトリックスみたいなのがあれば、例えばゴダール映画を分かっているフリをしてインテリぶる美大生とかさ、パゾリーニを愛する詩人ぶった青年とかさ、そういうペダンティズムが無くなるよね。もうダイレクトに様々なことが語り尽くされているんだけど、その全体像を把握するのは観衆のリテラシーにかかってるっつーのが挑戦的だし、うさんくさいゴダールみたいなインテリぶった映画とはわけが違うのはこういうところだよね。ゴダールが過去の哲学の様々な主題をレトリックによって美しく飾って新しく見せているような映画だとしたら、マトリックスは伝統的な哲学の系統に沿ったサイバーパンクポストモダン映画だと言えると思うんだよね。ポストモダンといっても衒学的なのから伝統的な哲学の系統の最先端というものまで色々あると思うんだけど、マトリックスは後者だよね。


で、ちなみにサーガがマトリックスをパクったとしたんだったらサーガは酷いと思う。あまりにサーガはマトリックスに似すぎているというか、マトリックス3のことはおぼろげに覚えていたけど、改めて見てみたらサーガそのものじゃないか!と思ってマトリックスにじゃなくてサーガにムカついたね。救世主が神にロゴスを伝えるために自分をサクリファイスするっつーモチーフはマトリックスそのものだよね。サーガがマトリックスから影響を受けていないにしても、似たようなサイバーパンクの話がもうあるんだよっつーのをシナリオライターは知っておくべきだろう。ここまで同じだったらやっぱりダメだろうな。まぁ超越者というか神的存在に救世主が向かっていくっていう話はメガテン通奏低音のように流れるテーマなので、何もマトリックスの特権とは言えないけどもね、全てがバイナリデータだとかなんだとかっていうようなモチーフもかぶっているし、ようこそ現実という名の砂漠へ・・・みたいなのもほぼ同じだもんね。いやーサーガパクリだろうなー。これ。アトラスも落ちたもんだね。元々似たようなテーマはアトラスが持っていたんだから、それを軸にオリジナルストーリーを作ればいいのに、マトリックスの焼き増しみたいなのをサーガでやっちゃったわけだね。こりゃ酷いな。完全に現実世界が崩壊しかけているところを救世主が神にロゴスを伝えることでギリギリ助かるっつーなんかタイミングっつーかエンディングもほぼ同じだしね。まぁこれもシミュラクラだって言っちゃえばそれまでだよ。ウィリアム・キブソンみたいなSF小説から日本のアニメまで、ある意味でタランティーノ的なオタクのセンスで色々混ぜたハイブリッドな複製物がマトリックスだとしてもね、でもやっぱそこは日本の特権を保ちたいっつーのはさ、日本のアニメとかゲームって複製されるような側じゃない?オリジナルの側というか。それが複製側をパクるようになるって明らかな退廃だよね。アニメの同人誌のストーリーをパクって作ったそのオリジナルのアニメみたいなもんでしょ。それっつーのはどうかと思うな。いや、パクリじゃないかもしれないけどね、ここまで似てるとちょっと疑わしいよね。


あ、んで今日はさすがにエッセイを書かなきゃいけないのでこの辺でやめるわ。いや、マトリックス凄いよ。マジで。ワイヤーアクションとかカーチェイスにだまされちゃダメね。あれは表面的なポピュリズムの産物だから。まぁもっとも俺はそれを含めて好きなんだけどね。本質は凄まじく深いです。SFとカンフーとアクションと哲学的啓蒙が一体になったものなんつーのはなかなかレアだろうな。本当に。まとめるとマトリックスという映画はプラトン的な意味でのGood、つまり物事の本質を洞窟の中に入ってくる影で判断するのではなく、物事の本質をそれ自体として反射させてくれる素晴らしい存在としてのGoodがね、マトリックスという映画が放つ啓蒙の光なんだよ。それはマニアックなところをディグしないと出てこないようなレアな光ではなく、どこにでもあるようなありふれた光なんだけど、その光が本質を反射することで人間達にそれを理解させるような、ある意味で究極的に平等な光なんだよね。それはAvailabilityという意味でもそうだし、映画の取っ付きやすさでも同じ。ただ理解するには思考とリテラシーが必要だけど、そこにマトリックスがあることで、啓蒙的認識の道はまるでオラクルが言う道のように開けている。ただそれを選ぶも選ばないも人々次第なんだけどね。そこでWillを肯定するも否定するもよし。大切なのは正しい知識と考えることなんだよっつーのを教えてくれるっつー意味でマトリックスは光だね。まさにGoodそのものです。

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