行方不明の象を探して。その83。

あと読もうと思って気合を入れすぎて買って全く読まなかった小説はもう家の倉庫に送ってしまおう。去年はあれだったな、ずーっと書く生活を送っていて腰をダメにしたじゃん。その時に少しは小説のことを忘れて封印していた武術の動画なんかを見たら?って思ったら頭から「ササーッ」って音がしてシュワンシュワンしただろう。「そうだ!武術だ!」

 

そこから武術になった。小説は書かなくなった。というか小説なんて無いんだと思った。そもそもプルーストのあんな駄作を「名作だから」という理由で座右の書にしているキチガイが多いということは、あんなものに時間を割く暇な人間がそれだけ多いということなわけで、そういうやつが「ゲームは時間の無駄」とか言うと刺しに行こうと思うわけで、そのためにも例の刺客とのコンタクトは欠かせないでいる。

 

小説ほど時間の無駄なものはない。ゲームにはまだ実態がある。有名人ならそれを実況して収益化するなんて方法もある。何よりゲームは生きている。それに対して小説は死んでいる。完全に。音楽と同じだ。20世紀に音楽の全てがやられ尽くしてしまって、もはやもう何もやることがなくなっているのと同じことが小説で起きているというよりかはまだ音楽のほうがマシだったのかもしれない。

 

小説は音楽よりだいぶ前にもう終わっていた。ところでモチベーション。プルーストを超える長い小説を書くとなると気が遠くなるけど小説は何を書いてもいいわけだし、一般的にはストーリーがあって登場人物がいると思われているのが小説だったりするわけだけど、それは物語なんであって小説のひとつの要素でしかない。

 

何を書いても小説は小説だ。あと音楽と同じで何か聞いていてパクれそうなところがあったらそのままパクっていいわけで、パクってない音楽家なんていないのと同じでパクっていない小説家などいるわけがない。小説はパクらないと書けるわけがない。全く音楽を聴いたことが無い人間からバッハ並のメロディの羅列が生まれてくることはまずない。そういう意味で言語と同じだ。いや、言語でしょう。音楽も。小説も。

 

「あなたの目標のひとつでしたねそれが」

 

「何がですか?」

 

「カフカのように小説を書くということ」

 

男はそう言った。男と言えば男だ。男を出してくれば小説っぽくなる。わざとらしいダイアログ。いかにも作ったかのような即席でその辺の草とか雑草とかを煮詰めて作ったようなシチュー。ダイアログにしても陳腐だろう。誰がそんな言葉をリアルで言うものだろうか。絶対言わないような台詞が小説には出てくる。だから大体の小説はくだらないし最初の数ページでヘタな睡眠薬を飲むより眠くなる。

 

そのためにカフェインをとらなきゃいけなくなってカフェイン中毒になってきて胃が荒れまくる。リニアな関係ではないけど結果的につまらない小説のおかげで胃が荒れているということになる。直接的に胃が荒れるものを食べていようが間接的に胃が荒れる原因を作っていようがね、胃が荒れたという現象を見るべきなんであって、それがつまらない小説なのか、暴飲暴食によるものだったのか、そんなのは関係ないんですよ。

 

いや、今となっては遅すぎる。それがなければ、あなたの一部にはなっていないのです。先生は、お披露目パーティで彼女を紹介するときに、婚約者の名前をなくした男性の面白い話をされました。 

 

彼女は出て行ってしまい、結婚を拒否してしまった。先生は彼女が正しいことをしたと確信していたので、僕は「それは守りの観点から言っているのか、それとも蟻の戸渡責めとかの観点で取れるのか」と尋ねた。 

 

彼は僕の質問を理解していなかった。僕が一番近くにいて苦痛を与えたいと思った男、僕の人生の中で次に名前が挙がる男は、僕が自分について彼に話していることを決して理解することができない男。僕たちはいつも遅くまで起きていて、彼は僕が去らなければならないこと以外の、女の子が望むことのすべてを理解することはできなかった。

 

そして象は頷いてからビールをひとくちすすった。そして手首の内側で瞼をこすった。ゴリゴリしてて人にやったら死にそうな感じだった。何本かのビールが僕に眠気をもたらそうとしていた。先ほど全ての空き缶を海に投げたはずなのに、ビールRegenというラッセル・ハズウェルを倒したときに出るレアドロップのアクセサリを装備していたおかげで、手元にあるビールがRegenして増えていた。

 

それは淡い泥のようなレコードで、僕にラッセルが個人的に送ってくれたレコードだったが、内容がクソ過ぎたし、愛すべきクソだとは分かっていても、その時は空腹だったからイライラしていたんだと思う。そのレコードを割ってしまった。

 

「時代が変われば空気も変わるし、動物の考え方も変わる」

 

と象は言った。

 

「言わば俺らは当時の時代精神を象徴したコンビだったんだよ。そういう立場に陶酔していたという面があったことは否めない」

 

象はコンビニの袋からプッチンプリンをむしりとって野獣のように食らいついた。僕は何かを聞き始めたら最後まで聞きとおさずにはいられない性格なので、象がこの件について話したがっていないというのを察しながらも、それを無視して質問をし続けた。

 

「エビバディプッチン」

 

「エビバディプッチン」

 

「ピース」

 

と象は言った。

 

「ピース」

 

と僕も言った。

 

その後、象は新聞を取り上げ読み始めた。そしてまた新聞をしまった。新聞を読んでいるのか読んでいるフリをしているのか、Rボタンを押せばガード、話せば普通の状態みたいなのを繰り返しているように見える。そこで脇から銃で撃ってくる何かがいる。でも象の新聞紙は防弾仕様になっている。防弾仕様でも新聞紙を上から被せるものと一体型になっているものがあるから、一体型のものの場合、記事がめちゃめちゃ古いものだったりして一瞬で防弾だってバレるからあいつも狙ってきたに違いない。

 

象はそう言うと新聞紙を取り上げ捨てて今後は取り外しができるものにしようと思った。でもそのうちスマホのアプリとかでバリアが張れるようになったりすれば新聞なんていらなくなるのにな。10億円あったらスマホバリアを買うだろうか。でもそんなものもあいつが言っていたように30年後には月1000円ぐらいの防弾サービスができているに違いない。まぁこれも今のサブスクという概念から来ているものなのであって30年後にどういうお金の流れになっているのか、その流れに身を任せるのか、レストランを出て銃撃者が誰か突き止めるのか。