行方不明の象を探して。その111。

ここの薬剤師は知らない人間が来るとパクられると思っているし銃を片時も離さないので間違えって部屋に入ったら射殺されることになる。とにかく彼は容赦ない。腕のよい薬剤師で薬剤師というよりシェフという感じで、どんなドラッグでも調合できる。先ほどキマリは青魔導士的な中途半端な存在だと言った。

 

ではFFにおける薬師はどうだろうか。明らかに薬効からしてコカインとしか思えないものをモンスターの落とし物やアイテムから調合する優秀なジョブだ。薬師のスキルを覚えて薬師を使うのではなく薬師からアビリティを継承するという方法がメジャーだと思う。

 

ドラッグ好きの自分としては薬と聞いただけでテンションが上がってしまうのだが、薬師も例外ではない。だから薬剤師の部屋には入らないでほしい。彼はとても繊細でいいヤツなんだ。ただイリーガルなことをしているという自意識が強いからパクられたくないだけなのだ。彼は銃の手入れを怠らない。実際に発砲することなんてほとんどないのに執拗なまでに銃器の管理に気を遣う。職業病なのだろうか。FFに銃という武器はあっただろうか?あるものもあればないものもあるな。薬師が重火器を持っていたら間違いなく彼だ。そこは覚えていてほしい。

 

そうそうそう。それ言い出したらゲームの世界だってノンフィクションだろう。あれが現実だっていうのに。我々の世界がフィクションなんだよ。論理が割とがっちりしてればしてるほどそれは虚構である可能性が高い。普通逆なんだよね。論理がしっかりしてるとリアリティがあるとかってことになる。逆なんだよね。逆なんだ。逆なんだよ!何回言わせればいいんだ。

 

そりゃリマインダーは色々あるさ。足を踏み外さないこと。暗すぎるきらいのある玄関でピラネージの版画が二枚かかっている。牢獄のだ。パルマ産の薬詰めのソファーはくるみ材の古風なもの。特に変わったところはない。麻薬GメンにはバレバレのGスポットだ。

 

自分とシンバル女がドラッグをやっては古本の匂いを嗅いだりすることに使っている部屋はやたら大きな部屋で、フランス産の角砂糖で作った暖炉があり、床にはエホバ産の赤ワインと白ワインの詰め物がしてあって、隠し天井の上にはニスと金色のしっくいだけが残っていて、隠し天井な割にレアなアイテムが手に入るわけでもなければ、ドラッグを隠している場所なわけでもない。入り口にタレットが置いてあるので不法侵入者はハチの巣になるから特にドラッグを隠す必要はない。

 

木材は虫に喰われてすっかり粉になってしまっているが、その粉を鼻から吸うとむせる。キリコもむせる。なぜならボトムズがむせるようにできているからだ。もうちょっと機体をガンダムっぽくすればいいのにギリギリ砂ぼこりが舞う場所で戦った場合にむせるような設計になっている。

 

ただその代わり機動性が抜群なのとロボット乗りのスキル次第では下手なモビルスーツよりも強力になりえるから恐ろしい。シャア並の天才がモビルスーツに乗ったらモビルスーツが勝つんじゃないかって?それは当然さ。

 

ドアは明るい緑色で時代物のヴェネツィア風に金色の枠がついている。粋でしょ?毎回粋だなって思うもの。広間に入ると右手がちょっとしたふたつの小部屋になっていてここは本が積み重ねてあったり、とにかく本がほこりにまみれてぎっしり詰まっている。シンバル女は適当にここから本を取り出して嗅ぎまくる。内容によっては読むこともあるそうだ。

 

掴んでいるバイブレーターは本物だが自分の肘ぐらいはあったと思う。先端が触れた途端、シンバル女はシンバルを何度も鳴らしシンバルのような声をあげ、縛られた両脚を手旗信号のようにVの字に突っ張らせた。手も同じように突っ張らせていたので偶発的にシンバル音がすることがあった。

 

しかしここまでしてシンバルを手から離さないとなると、シンバルは彼女の身体の一部なのではないか?と思うようになった。肉でシンバルが繋がっているとか、そういう感じしかしない。持っているのだなという確信が抱けなくなっていた。

 

シンバル女がおまんこからとろとろと水あめのような濁ったものを間欠泉のようにあふれさせた時、窓の外で徘徊老人を探さないと人質を殺すというアナウンスが鳴り、令和小学校のみなさんは覚悟しておいてくださいという決起の心意気が感じられ、革命の空気を吸っている気がした。秩序と混乱の境のバウンダリーというトートロジー。シンバル女のおまんこもトロットロジー。決して魅力のある女じゃないんだけども。天井には穴が一つ、つまり天窓がある。

 

そこから出て行って宵の空に革命の空気を感じる。革命的な雰囲気がすればするほどペニスが屹立する。東京の屋根を見下ろし、国会議事堂を眺める。ニヤニヤしながら送信し受信するアンテナになる。ただし伝統的なアンテナの鋼鉄の支えがなくても立っている。つまりは僕は一人で自然な勃起で自分を支えているのだ。ただ人に見られないように注意しなくれはならない。連中にはその分けなど分かりっこない。

 

この頃の象の暗黒のヴィジョン。

 

夜は黒く宇宙も黒でした。こんな夜にはどんな形も見分けることはできなかったでしょう。黒く太い線が黒い知と黒い空を分けていました。どこもかしこも暗黒また暗黒の層ばかり。「あなた」とあなたが呼ぶところのあなたは暗黒の中を転げまわるボールでしたが、ただし暗闇は「黒」のようなものではなく、無は何かであるから、それは無でもないのでした。あらゆるものがボールになり、ボールは儚く消えて、あなたはどこ?あなたは転げまわるボール。手から手へと投げ渡されて。

 

でもそれを見るのは裸眼のほうが質感が良くて、眼鏡をかけるとボワーンとする感じがする。けれども眼鏡をしないとさっぱりなんだか分からないので眼鏡をするとボワーンとはしていないので、裸眼がより裸眼だということに気が付いたりして、そしてボールが回転するたびに、あなたは人格が、アイデンティティが入れ変わるのを感じ、頭がおかしくなる。

 

ボールが回転していない時は安定しているように感じる。回転していない時に近づいて眼鏡を外して裸眼で見てみても回転している時の質感は味わえないから悩みどころではある。そんな暗黒にあなたは生きているということに気づくべきだ。グルグル回転する巨大な蛇を嫌う人々のように。

 

蛇たちはあなたの首や腕を這いまわる。あなたはとても不安。あなたは一歩進んでみる。どうしていいか分からない。そこには何もないから。何もないということさえないから。でもね、気がついたときだけでもいいんです。ライラックを日向においてやってください。ライラックが喜びます。ボールをあげると我を忘れます。頭がいいのでハイタッチができます。心の底からの究極のソウルメイト。魂で繋がっているという感覚。

 

「女たちがウナギと格闘するのを見に行くべきだったんだ」

 

何十人もの友好的なフラクタル生物が自分を取り囲み、まるでチャボの卵を自らドリブルしているような姿で、失われた真の詩の言語を教えようとしていた。目に見える5次元のエクスタシーの形でしゃべっているように見えた。鏡のような表面で、溶けた意味の川が自分の周りをゴボゴボと流れていく。言語は「聞くもの」から「見るもの」に変換された。

 

過去が静寂の中に入り込み、心の目の前で剥がれ落ちて、DNAの連なった暗い布を広げている。目に見えるもの、見えないもの、過去に遡る力、時空転送、自己発見は、我々一人ひとりを大きな歴史のパターンの縮図にする。内省の惰性は回想へと向かう。記憶によってのみ過去は捉え直され理解されるからだ。そして現在を経験し創造するという事実において我々は皆、役者なのである。現在における経験が最小限のものである感覚遮断の稀な瞬間には記憶は自由に語り過去の瞬間の努力の風景を呼び起こすことができるのである。