行方不明の象を探して。その144。

「占星術?」

 

僕は窓からテーブルに向かった。彼女は黒曜石の鏡を見つめた後、水で洗い流して冷凍庫に入れた。カチコチの黒曜石。

 

「9と1は10、3は13」

 

「アセンダントから来る意識をコントロールして、サインの意識に溶け込むこと」

 

分離と統合。再分極化と分節化。俺みたいに物質世界にこれ以上、居られない人間としてはサインを我が物とするしかない。というかイメージに使われてしまっては永遠と物質界に囚われ続けることになる。物質界に飽きていないなら特に問題はない。別にまぁ楽しいことだってあるだろうから。

 

「新しい仲間が新しく増えましたので、そちらの方を紹介したいと思います」

 

「ロングブーツを履いているというのはどういう意図があるんですか?」

 

「ロングブーツ仲間の紹介でした。バイバイ」

 

これは受け取る準備ができている情報のみが開示される仕組みになっていますが、頭の中のイメージのゼロポイントを平行移動するイメージで動いてみてください。気持ち悪くなったり酔っぱらったような感じになっても恐怖心を抱かないでください。恐怖心を抱くようでしたらやめたほうがいいでしょうね。


平行移動をはじめて5分ぐらいしたら、ドアを軽くノックする音を聞き取った。聞いたというより何かが聞き取ったという感じだ。俺は何かエキサイティングなことを期待していたのだが、それは彼女のプライベートなオナニストだった。世界中の誰もが驚いた。彼女は足を組んで床に座っていた。無から有へ。何かの変化があるに違いない。そう期待しなければやっていけない。

 

僕にはこの部屋に何も見えていない。俺には見えている。瞳孔はピンポイントで浮かび上がった石像に挨拶するかのようだった。驚いたことに彼女の手が僕の肩にあった。俺は特に驚かなかった。彼女は反対側の床にしゃがみ込み、FPSゲームのステルスみたいな動きをしていたのだが、身体が丸見えなのでステルスでもなんでもなかった。

 

もはや太陽が中心なのか地球が中心なのか分からなくなっていた。ヘリオセントリックでは全く何も響かなくてうお座はおとめ座になる。ヘリオセントリックでのおとめ座はジオセントリックにおけるおとめ座の解釈であっているのだろうか?違うと思う。何しろ太陽が中心なのだから意味合いも変わってくるだろう。

 

ダメだ。やはりアカシックへのアクセスが必要だ。彼は何が起こっているのか全く気がついていないようだった。VRの左のサムスティックが勝手に動くようになってから彼の態度は激変した。ただですら当たらない弾がさらに当たらない!と癇癪をおこしていた。俺はいい機会だから

 

「利き目を調べてみたら?」

 

とアドバイスした。

 

書くべきではないものが勝手に消えていく。これで二度目だ。なぜ勝手に消えるのか。俺は「書くべきもの」と「書くべきではないもの」を分別しているつもりではあるが、宇宙的な検閲があるらしく、書いてはいけない文章は勝手に消えるようになっているらしい。

 

エーテル体による観察は物質に影響を及ぼすのか?俺はそれを幽体離脱だとは思って居ない。本体が宇宙にある、という話はもう話した気がする。愚者のときに冥王星と人との出会いは、記憶喪失の人がある日突然、シーズンDとGとの関係性に目覚めたとき、Bを割った後に水分を摂ったのはチェイサーではないのだが、自分用に作った宇宙に行きやすくなる音源の公開を躊躇っているのは自分がケチだからだ。100万円ぐらいで売りたいぐらいの価値がある。お金なんてどうでもいいって言ってなかったっけ?

 

「どうした?寝坊した。え?あれは見に行かない」

 

「でもすっげえ綺麗なところだぜ?」

 

「いいや、行かない」

 

オシッコが漏れそうになったのでトイレに行く。サムスティックが暴走したら怒らずにカスタマーサポートに電話するか深夜の場合、メールする。瞑想用のVRソフトのサブスクリプションを買ったらカード会社にセキュリティの問題でカードを止められた。勝手に使われたと思われたらしい。海外のサブスクだからね。迷惑な話だ!と思ったけどアメリカに居た頃を思い出すと日本っていい国だなと思う。カスタマーを守るためにカード会社も努力しているのだ。アメリカだったら変なもんに課金しても課金するほうが悪い。いや、それは支払ったのはあなたなので止められません、ブラブラブラ。ブラジャーアンドソーオン。

 

アイオンとケイオスマジック。高等エノク魔術とエノキダケ。

 

「役場のおじさんが掃除していたところを見たことがあるの。でも詰め所でAV見てた。だってイカ臭かったんだもの」

 

イカ臭いだって?実際のイカの匂いを嗅いだことがないのか?ザー汁は栗の花の匂いだ。カルキ臭い例のアレだよ。夏には汗と小便とが混ざって強烈な匂いになる。それが好きな女がいて、そういう臭いがするちんちんに顔を埋めてオナニーしてスプラッシュしまくっていた。匂いフェチは男だけではない。バイオリンで何かのコンチェルトを弾いてそうな清楚な女の子だって性癖は変態かもしれない。全くその外見や職業と性癖は関係がない。

 

俺はいつも親指をこめかみにつけて手をパーにしてホドロフスキーみたいに

 

「これは小説だ」

 

と言う。

 

「なぁーんだ、これは映画だ、っていうオチか」

 

じゃないんだ。あれは

 

「これは人生だ」

 

ということの比喩なのだ。なんでそこを間違えるのか。ホドロフスキーはアンダーアチーバーだと思う。あんなにタロットやら神秘主義に思うところがあるのに表現している映画が少なすぎる。予算の問題もあるんだろうが本当にもったいないと思う。俺が一番好きな映画はパラジャーノフの「ざくろの色」だが、それに匹敵するものをホドロフスキーは作れたと思う。そろそろ村上タイムかな。こうやってべらべらとどうでもいいことを喋っているだけだとブログと変わらなくなるから小説っぽい所作を入れないとな。

 

どうしよっかな。

 

とりあえず椅子に座ってテレビをつける。でもなーテレビつけないもんな。テレビないから。ネットも見なくなった。宇宙にしか関心がないから世俗のことが気にならなくなっている。何か食べようか、と思っても俺の食事は一瞬で食べ物を胃に流し込むような感じだから、わざわざサンドウィッチを切ったりして、エキゾチックなものを挟んだりしてビールと共に食べるような趣味があったとしても石ころを見つけたら側に投げる。

 

こういう風にいつも課題だらけだ。

 

「どうする?何がもう忘れた、なの?忘れないでしょう。記憶って海馬にあるんじゃなくてアカシックにあるってこないだ確信したんじゃないの?海馬の記憶なんて曖昧じゃない」

 

彼女はそう言うとそう言うとそう言った。で、適当になんでもいい、手をくねらせてとかありふれたクリシェを勝手に選んでもらって、また座ってもらうか、バッグからスマホかスマフォかフォフォフォか友達が書いてきた「フォッフォッフォ」って書いてある文章の「ッ」が「シ」に見えて、フォシッシフォシッシフォシッシに見えるだとか、それでゲシュタルトが崩壊して精神病院へ。

 

俺が発作でぶっ倒れて精神病院に入れられそうになったのも頭がクレイゼーだったんじゃなくて松果体のチャクラがオープン過ぎたからだ。医学的にはクレイゼー。それが怖くて閉じるのがサバイヴの方法だった。でも勿体ないことをした。戻さなきゃ。今なら大丈夫だ。余計なもんは入ってこないし、そもそも余計なものに興味がないから興味があるものしか入ってこないことが確定している。

 

「もう駄目よそのネクター。甘すぎるから。桃っていって合成物質だから。あとネクターの語源って多分神の汁みたいな意味のネクタル」

 

とにかく、これから僕の身に起こったいくつかの出来事は、誰の身に起こっても不思議なことではないし、実際、誰もが通り過ぎてきただよ。ぼかぁそんなの信じないね。本を投げ出して走りに行こう。

 

信号まだ赤だった。車の流れはまだ止まっていなかった。中南海の雲と空に去り行く運命にあったあの子、あいつとデキているらしいぜ。うん、うんにゃ、デキているって妊娠しているって意味じゃなくて関係があるってこと。関係って言い出したら関係がないものなんてないだろう。ほら、それはまたさっき言ったことの続きで・・・。

 

次の日になっても連絡が取れず、彼女の部屋を訪ねてみた。さらに3日が過ぎた頃にもうキレかけていて、うん、やることいっぱいあるからそんなことに時間割いてらんないもん。