2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

行方不明の象を探して。その52。

人生をうまく生きるコツは、この脱線をうまいぐらいに料理して、その脱線の料理のレベルをシェフ級にまで磨き上げることだ。脱線が始まると本筋のほうは全部ぴたりと停止する。じゃあってことで本筋を続けると今度は脱線がおしまいになる。全くもってこうい…

行方不明の象を探して。その51。

「HPSCHDのレコードを擦り切れるまで聴いたら今回の話はなかったことにしようという園長の申し出にキリンは大反対したのさ。だってキリンは飢えていたから動物園に入りたがっていたんだよ。でも俺は「それで手を打ちましょう」と強引に話を進めてしまったお…

行方不明の象を探して。その50。

英語で言うところのYouにあたるものの訳語が「お前」なんだろう。「あなたは座っている」というより「お前は座っている」というほうが小説っぽいからお前になった説に決定しておこう。暫定的に。この暫定という字面も強そうで好きなの。暫定ってなんか凄く反…

行方不明の象を探して。その49。

一日3000字書けば数年でプルースト並になるだろう。でも単純なテキスト量を計算すればそうなるかもしれないけど例えば「ひぐらしのなく頃に」だとかテキスト量が多いゲームも含んだら何千万字ってことになるだろうし、そもそもシリーズものという風にジャン…

行方不明の象を探して。その48。

「なんじゃらほい?」 とか言う言葉を使うと古くなる。古くならない言葉を使おう。それでも古いんじゃないか?男はそう言うとワインを飲み干した。大体のくだらない小説はどうでもいい話の間に何らかのアクションがあって「ウィスキーの氷がカランと音を立て…

行方不明の象を探して。その47。

気が付いたらキーボードからうんこのような臭いがしていた。キーボードの雑菌は便器並だという話を聞いた。そのまま鼻をほじったりするから便器を触った手で鼻の粘膜に便器の雑菌をこすりつけているようなもんだからビョーキにならないわけがないと男が言っ…

行方不明の象を探して。その46。

香港の友達が「日本ではなんで三国志があんなに人気があるのか?」と不思議がっていた。元々時代ものが好きでキャラものが好きな日本人だから中国の話なのにほとんど自分の国の話のように考えるのが三国志だろう。で、三国時代があって戦国時代がある。だか…

行方不明の象を探して。その45。

「大丈夫かい?」 「平面にしろと言っただろう」 「出られるかい?」 「出られるっていうより設計ミスだよ。こんなもの」 今思い出したのだが、吐いたのは象で僕ではなかった。僕はひたすら雄たけびをあげていたのだ。象はエンジンを切りダッシュボードの上…

行方不明の象を探して。その44。

例えば行けそうだと思う崖があって、二段ジャンプできれば簡単に行けそうなところは実際は廃墟、というより肩の力が入り過ぎて肩が凝っていたのだと思うけども、崖の話に戻るけれども、廃墟の隙間から見える小道に入らないと行けそうな崖の上にはいけないの…

行方不明の象を探して。その43。

自分の荷物はっつーとリュックの中に乾パンと胸ポケットに聖書を入れている。シャツというかスウェットというかダウナーというかアッパーは錆びた暗器を手入れするときに手ぬぐい代わりとして使っていたので鉄臭くなっている。聖霊降臨祭から24日目の日曜に…

行方不明の象を探して。その42。

妄想に蝕まれ、無になるために戦っていた彼らは、というかその「彼ら」も「男」と同じマンである。ありふれた抽象性。彼らは瞬く間に自分の思考に触れるもの全てを創造していった代わりに失うものも多かった。暗殺者は、人類の歴史の中で最も古い職業の 1 つ…

行方不明の象を探して。その41。

「これ一回でおしまいね。今日は調子が良くないわ」 「でも相当ソウル溜まってるわよ」 「あたしはね、普段はもっと効率いいから」 バックスタブを終わりにすると、我々はドラフトの選手を決める会見を見た。 「なんで会見を今見ようと思ったの?」 「なんと…

行方不明の象を探して。その40。

店を出ると、斜め前にあるファラデーに入った。電磁波っぽい名前だ。しばらく前まで電磁波がのさばっていたフロアの真ん中にはコンバトラーVの原寸大のマシンが置かれている。髭を生やした小学生たちがキャッキャいいながら遊んでいる。知っている子がいるん…

行方不明の象を探して。その39。

「ドラッグでイクなんてグレイト・ギャツビーじゃない」 「アメリカン・スクールのジャンキーたちも来るっていう話よ。それにジャーマン。スクールのジャンキーも来るし、ニュースクールとオールドスクールもマッシュアップされるみたい」 「キノコでラリる…

行方不明の象を探して。その38。

「キメるのは後だ。アムス行きのパスポートは持ってきたか?」 「はい」 「じゃああっちの部屋で話そう」 隠蔽された形に近づきつつある。言葉を変えようと決心した時、抵抗の最初の結び目が有無を言わさずに現れた時、そして反復がそれらの特徴に侵入してき…