行方不明の象を探して。その101。

生の鶏が原因なのか一週間後ぐらいに急激に発熱し始めてその後、滝のように流れる下痢に襲われた。辛すぎたので思い出したくない。健康の素晴らしさを思い知る。腹が下ってるときは曲も作れないしギターも弾けない。

 

ギターヒーローっているだろう?ジミヘンとかカートコバーンとか。当然、俺の場合、マニアックだ。誰って書くと具体性が高くなるのでつまらなくなるからとある俺のギターヒーローとでも言っておこう。このギターヒーローの作品、マニアックすぎてCDですら手に入らない。で、手に入ったのがレコードだった。ヴァイナルだ。ヴァイナル。

 

一時期狂ったように集めていたヴァイナル収集はいつ辞めたんだろうか?タンテとフォノアンプとヘッドフォンアンプを繋がなきゃいけなくて電源はどっかに行ってしまった。レコード針は適当に扱い過ぎてテーブルの上かなんかに乱雑に置かれている結果、多分、もう使えなくなってるだろう。イッた後の感じだ。俺は何かに情熱を傾けて熱が冷めるとどうでも良くなってしまう。タンテも酷い状態で保存されていたな。タンテの上に大量に物が置かれている。

 

でも例のギターヒーローのヴァイナルはタンテじゃないと聞けない。でもぶっちゃけ音源ならYoutubeにある。でもヴァイナル起こしの音源ってのはアップロードした人間のレコード再生環境とか録音環境に依存するからCDほどの普遍性が無い。つまりはレコードってのはオーディオのセットで如何様にでも変わるという性質がある。だからレコードは廃れない。俺が持ってるフォノアンプとヘッドフォンアンプはまぁまぁの高級品でまぁ端的に言ってえげつない音がする。

 

でも電源がどっかに行っちゃったって書いたよね。だから電話したんだ。メーカーに。そしたら親切に教えてくれた。まぁようは別に純正のを使わなくても同じボルト数の電源を使えばいいとのことで早速電源を買った。タンテとフォノアンプとヘッドフォンアンプの電源三つ。オーディオケーブルもめちゃめちゃ高いのを使っている。そう、レコードに狂っていた時期があったのだ。5年前から2年ぐらい続いたっけ。

 

ただタンテを置く場所が無いからかなり大規模な掃除をした。買って読んでない中国の古典集をとりあえずどっかにしまった。モノのエントロピーを下げることが重要だ。そしてすっきりしたところにタンテを置く。やっぱりタンテは見栄えが良い。めちゃめちゃレコードが聴きたくなる見た目をしている。当たり前だ。

 

そういえば下痢というより滝のように流れ出る水便は一週間ぐらいで治った。んでそっからヴァイナル。電源が届いたんで繋いでセッティングしたら全部ちゃんと動いたのだよね。そして例のギターヒーローのヴァイナルを聞く。でも物凄いハムノイズがする。しまった!アースケーブルが!と思ってテーブルを探したらアースケーブルがあった。まるで全部膳立てされてるようにレコードを聴く環境が整った。

 

俺のギターヒーローのヴァイナルを聞いてみた。やっぱりレコードはいい。ジャケがデかいしヴァイナルの匂いやら質感やら何よりあれだ、今の俺はロックだろう?アコースティック楽器が録音されているものはヴァイナルに限るのだ。前置きはいいか。聞いてみた。もう全然Youtubeに上がっているのと違った。

 

ヴァイナルは自分でリスニング環境を整えることで音源のポテンシャルを最大限にまで活かすことができる。レコードに狂っていた時期に買っていた機材が今更めちゃめちゃ役に立った。ヘッドフォンもえげつないほど高価なものを使っている。音が悪いはずがない。ヴァイナルで聴いたギターヒーローの音源はまるでそこでギターが鳴っているような質感だった。というよりレコードってそういうものだろう。特にジャズとかね、打ち込みじゃない人間が演奏したやつは異様な臨場感がある。

 

レコードで買ったにも関わらず散々Youtubeで聴いていたので内容は知っていた。でもギターの質感が違い過ぎる。これは驚きだ。今までヴァイナルで聴いてきた音楽はテクノとかハウスとかジャズとかファンクとかでロックってのはない。そもそも俺はロックプロパーの人間ではないから。まぁ俺のギターヒーローはロックギタリストっていうよりフリージャズギタリストなんだけどね。

 

とにかくオブスキュアを極めるそのヴァイナルに俺は聞き惚れて何回も聞いた。手元にタンテがあるからすぐ頭出しできる。ヴァイナルは音が近い。そりゃそうだ、そこで音が鳴っているものをアンプリファイしているわけだからデジタルの比じゃない。Youtubeとかストリーミングで音楽を聴くことに慣れてしまったのだろうか。ヴァイナルの音が凄まじいものに感じられる。

 

だったらこういうオブスキュアなレコードを集めて聴きまくろう!と思ったのは良かったのだが、そもそもオブスキュア過ぎて流通量が圧倒的に少なくて、あったとしても大体プレ値だ。俺は音楽を聴くときは浴びるように聞きたくなる。でも浴びれるほどこのような音源の録音物自体が存在しない。

 

だったら金が無かった中学生といっても登校拒否だった俺がなぜ中学でバイトをできていたのが謎だったのだがこんな俺でもバイトをしていたのだ。レコードを買うために。DJになりたかったからね。今の若者は誰もギターなんて弾かない。時代はターンテーブルだ!って時に俺は思春期の真っただ中にいた。でも買えるレコードの数は限られていた。時給650円というどこの後進国か?というぐらいの時給でバイトをしていたからレコードを買おうものなら一か月分ぐらいのバイト代が全部レコード代に消えた。

 

でもあの時に聞いていたシカゴハウスは豊かだった。限られた枚数の中でゲットーの黒人が「げっへっへーこれファンキーだぜー」とか言いながら作ったであろうシカゴハウスを何回も聴くのは最高に楽しかった、というより今思えば楽しかったなということだな。だったらあの頃を思い出そう。金が無くてレコードが買えないんじゃない。俺の好きなギターインプロヴィゼーションというジャンルの音楽が非常に限られているから限られたものを何回も聴くしかない。そうすればいいじゃないか。

 

昔に電子音楽を作っていたときは一日8時間ぐらい聞いていたな。というのも音の質感とかニュアンスを頭に入れるっていう感じが強かったんだと思う。結局、ゼロからなんて何も生まれやしない。何かをパクるとか質感を覚えて真似てみるとかそんなところから始まるもんだ。俺のギターは独学で勝手にやりたいようにやった結果、スタイルがもう確立されてしまっているけど、数少ない俺のギターヒーローの作品群を死ぬほど聞いてコピーできるぐらいになったほうがいいのかもしれない。

 

でもオブスキュア過ぎるから例えばそれはフレーズで弾けるようなものではなくて全体的な抽象的なものを掴むしかない。タブ譜とかに起こせるような音楽ではないからひたすらニュアンスだ。ギタリストってのは手癖があるだろう。適当に弾いているとブルースを弾いてしまうとかね、そこで俺は俺のギターヒーローみたいなギターを弾いてしまうような手癖をつければいいんだわ。

 

自分が適当に弾くスタイルは確立され過ぎていて自分で弾いていて飽きてくる。また同じような感じで弾いているなと。そこにギターヒーロー達のニュアンスを混ぜていくのだ。それが俺の当面のミッションだ。