2026-01-01から1年間の記事一覧
その頃、北イングランドの夜クラブで六夜連続の仕事があった、という声が混ざってくる。昼はスタジオ、夜はクラブ。退屈すぎてスタジオを削った、と言う。削った、という動詞が、指先を削るのに似ている。夜クラブで二人と出会った。彼らは、自分がまったく…
六十年代に状況が変わった。音楽が変わり、商売が崩れた。でもそれが理由ではない、という理由が理由になる。自由が減った。スタジオに行くほど自由は減った。そこで初期六十年代、幻滅。幻滅は北京では日常品で、棚の最下段に積まれている。誰も買わないの…
抑圧の一番わかりやすい標本は、西洋オーケストラ音楽だ。バロックでは即興が主活動だった。即興なしでは成立しなかった。しかし19世紀末には、ほぼ追放された。カデンツァは即興だったのに、いつのまにか「技巧の見せびらかし=ゴミ」と見做され、消される…
消えるからこそ、残る。矛盾だが、その矛盾が花だ。俺が言うプーンと香ってくる栗の花だ。オナニーしようがしまいが香ってくる。夢精しているのだろう。帰国後の俺には逆がある。資料は多い。正解が多い。正解が多いから演奏が権威になれない。演奏はただの…
「もし僕が、今、あなたに言ったら?」 「あなたが弾いてる間に、あなたが考えてることを言ったら?」 「でもそれって、本当に一致してる?」 「考えてることを弾いてるのか」 「弾いてることを考えてるのか」 「同じじゃないでしょう」 同じじゃない。ここ…
世界はずっと遅れて来るかずっと早く去る。会えないので俺は一人でその強調点に立ち続ける。アイデアだけが回る。回り続ける。回り続けるとギター奏者が自由に即興する、と説明されていたが、北京では逆だった。時間周期だけが自由に即興し俺だけが固定され…
芸術作品において、われわれが感動しているものは、作品そのものだけではない。少なくとも、作品を単なる色彩、音響、言語、構図、素材、形式、技法の総和としてだけ捉えるなら、芸術経験のもっとも重要な部分は抜け落ちる。人間は、音の配列だけを聴いてい…
AIが音を生成する時代において、音楽はふたたび奇妙な古さを帯びはじめる。かつて電気録音が、あるいはシンセサイザーが、あるいはサンプリングが、あるいはDAWが、音楽から身体を少しずつ切り離していったのだとすれば、生成AIはその切断を決定的な速度へ押…
その上にシンフォニーが未形成のまま浮かぶ。形成されない。シンフォニーは演奏されるまで形にならないというのに俺の北京の日々も誰にも演奏されないから形にならなかった。材料だけがある。豚足、ザリガニ、タニシ麺、大体のものに入っている八角。言葉だ…
彼女は「即興という言葉を演奏家は嫌います」と言う。「無計画、無準備、軽薄、そういう誤解が付着しているからです」 俺は笑いそうになる。帰国後の俺の生活もまさにそれだ。周囲から見ると俺は「無計画」に見える。北京に行ってボロボロになって急に即興と…
「ハンマーの音、聞こえます?」 俺が言うと、ベイリーは窓の外を見た。 「トン、トン、トン……」 その音は夜にもする。夜にする音は信用できない。夜にする音は、木を切る音かもしれない。あるいは、誰かが勝手に俺の人生の“証明書”を作ってる音かもしれない…
FMP、ICP、Incus、Companyの亡霊、名前はどうでもいいが、あの“世界が紙に回収されない瞬間”だけを求めて、針を落とす。レコードを買いすぎて北京で金を使いまくっていた時と同じような出費になってる。ヤバい。一旦止めようか。ヨーロッパのオリジナル盤だ…
そもそも北京に行く前の記憶が曖昧だ。武術留学のつもりはないんですがそういうことで。帰国後の話をするとすれば全く家業をやっているときに自家製詰所みたいになっている場所が片づけられていてまずはその場所を作ることからだったかラリーズとか高柳をア…
「何もするな。ただ透明に苦しめ。そうすれば、何かが勝手に全部やる」みたいな文章が急に出てくる。俺はそれが嫌だ。何もするな、は嫌だ。俺はやる。やることがある。毎日、触る。毎日、聴く。毎日、手を動かす。透明に苦しむって、なんだそれ。透明に苦し…
完全が来たら部分を捨てる、と言う。じゃあ、部分を捨てたら完全が来るのか。順序が逆だろ、と反射で思う。順序を逆にした瞬間、全部が宗教臭くなる。俺は宗教が嫌いだ。嫌いなのに、祈りたい。祈りたいのに、祈りたくない。願うのは贅沢じゃない、と自分に…
「あなたの笑顔について教えて」と彼は言った。 俺は少し考えてから答えた。 「笑顔は、今は遠くにある」 それは、事実だった。遠さは、紙の上の見栄えでは測れない。音が良いか、耳が悦ぶか、情動が動くか、それだけが目的だと誰かは言う。なのに世界は、紙…
SNS時代の演奏偽装、身体性、そして楽器への倫理について この言葉は、単なる精神論ではない。楽器に対する浪漫的な敬意を語っているのでもない。むしろこれは、SNS以後の演奏文化、編集技術、速度加工、当て振り、生成AI的な作品形式の氾濫を考えるうえで、…
出力の解放、作者性の錯覚、そして倫理的混乱の構造 生成AIの登場は、当初「創作の民主化」として語られた。絵を描けない者が画像を作り、楽器を弾けない者が音楽を作り、文章を書けない者が文章を生成し、映像制作の経験を持たない者が映像的な出力を得る。…
近年の生成AI音楽をめぐる議論において、しばしば「過去にも無断サンプリング、マッシュアップ、ブートレグ・リミックスは存在した」という反論がなされる。たしかに、音楽文化は常に清潔な権利処理のみによって発展してきたわけではない。ヒップホップ、ク…
ところで俺が北京に行った後ぐらいにモンハンの新作が出る。中国からSTEAM経由でモンハンは買えるのだろうか?それにしてもファイファンがあまりにつまらなさすぎて相当ファイファンをやるのだなと思っていたのにね、部屋の片づけのおかげでまた書くことの楽…
あんなに酒を飲まなければよかった。母に酒を飲んだ原因を言った。節約しなければいけないのは俺の浪費のせいで母のせいではない。でも渡航前なのに全く非日常的な感覚がなく日常的過ぎる倦怠感に悩まされている俺が禿予防薬すらも飲み続けることに考慮しな…
部屋を清めるお神酒なのだがこれが凄く美味しい日本酒でただ酒を飲みだすとアル中まっしぐらの俺としては普段は飲まないようにしているのにあまりにグルーミー過ぎて酒を飲んでしまった。弱いわりに泥酔したりはしないので酒を飲みながらMOBAをやっていたら…
例えば今なんかは禿予防薬を注文して今は節約の時期だし留学してからも節約というか所謂普通の学生の生活をすればいいわけだが母親に北京に行っても薬を飲み続けるの?とか言われるともう本当に限界になってくる。そもそも俺は年齢的にはおっさんだ。若く見…
第四部 批判と反批判――エリート主義・AI依存・新権威主義という誤射を超えて 23. 序論――なぜ反批判が必要なのか どのような秩序論も、現代においては即座に二つの疑念を呼ぶ。一つは、それは結局エリート主義ではないかという疑念である。もう一つは、それは…
第三部 実装編――個人、表現者、コミュニティ、プラットフォーム、法制度 15. 実装の原理――全体革命ではなく多層的浸透としての実装 AI補助型ノード秩序は、単一の「導入イベント」によって成立するものではない。それは一つの政府が採択して終わるものでもな…
AI補助型ノード秩序論 第二部 ネット暴力、誤読増幅、ポピュリズム以後の持続可能な社会インフラ 7. 問題設定――なぜ「秩序」がサステイナブル社会の中核なのか 持続可能性という語は、環境問題や資源問題の文脈において語られることが多い。しかし本来、持続…
第一部 ポスト民主政・ポスト大衆空間における分散的知性秩序の試論 0. 導入――なぜいま「秩序」が問題になるのか 現代の危機は、単純な権威の不在ではない。むしろ逆で、あらゆる人間が発話し、反応し、断罪し、拡散し、動員できる状況そのものが、秩序の危…
というかお上手ですねーというレベルではなくて中国人と言われなければ分からないレベルなのと声質が美人でいつの間にか俺は緊張していた。でも多分彼氏がいるんだろうし俺は年齢をごまかしていたからそういうのもアレだからな、でも彼女曰く理系ならともか…
「君は毎回それだね」 ジェイムズは笑った。 「毎回それって自分が考えていることしか書けないって意味?」 「そうじゃなくて。怒るなって。そうカッカするなって」 「カッカって?」 「ベーコネッグのことだよ」 「あらそう?」 「でも、アメリカに来たんだ…
根っこが太いのでそれで支えられているしそうではないかもしれないしその上には布の切れ端が掛けられておりその布は濡れている。特に意味はない。濡れた原因は分からないが布から滴り落ちる水が椅子の脚の周りに小さな水たまりを作っている。こういった意味…