行方不明の象を探して。その216。

結局、彼女のスニーカ-を早々と愛撫して嗅いだだけでファックすることはできなかった。ペニスがギンギンにそそり立った状態でその足で学校に行き昼休みの後の授業に出席した。終日ペニスは勃起したままで他人の家に空き巣に入ることは癖になってしまうことなのだなと思った。

 

スニーカーを嗅ぐだけなら授業中にトイレに行くフリをして下駄箱に向かって彼女のスニーカーを堪能すればいい。でもなぜ空き巣に入って味わうスニーカーは別格なのか。しかも目的のスニーカーを犯すということをせずに空き巣に入った家をうろうろすることがなぜあんなに興奮することなのかがさっぱり分からない。しかしそこにはスニーカーを犯す以上の興奮があった。

 

この日は学校が終わってから家に帰った後に牛が食物を反芻するみたいに、彼女の家のことをひとつひとつ頭の中で玩味してみた。そうするとまた侵入の時の興奮が戻ってきてペニスがギンギンにいきり立つ。何に興奮しているのだろう。目的は彼女の派手でいびつなスニーカーを犯すことだ。でも興奮するのはなぜ家をウロウロすることなのだろうか?

 

いつも、僕たちの家では、日が暮れないうちに夕食を取る。今日も、西日がレースのカーテン越しに室内を暖色に染めている間、僕は咲子と二人で食事をする。二人だけだと部屋が広く感じる。

 

思ったとおり、僕はあまり食が進まなかった。僕の勘はよく当たるのだ。僕は箸を持つ手をテーブルの上に置いて休ませ、彼女のスニーカーを見やる。テーブルは長方形で、その短い方の辺に僕の席がある。そして角を挟んで左隣の席に、スニーカーを置いた。右隣は見ても仕方がない。そこには今や空白があるだけなのだから。

 

彼女のスニーカーの前には僕の前と同じくいくつかの皿とカップが置いてある。カップの中は、湯に角砂糖を一つ溶かしたものだ。彼女はこれが好きだった。皿にはそれぞれ料理が盛ってある。蒸したジャガ芋いも。野菜のスープ。麦わら帽子の男が持ってきた魚を僕が外にある手作りの竈かまどで焼いたもの。

 

その後、10時過ぎに急ぎ足であまり使われていない脇道の曲がりくねった道を進み、それからかなり速度を落とした。ついに彼女の家の近くに到着した後、誰かを尾行するかのように暗い角を曲がり、小刻みに前進し、無理に息を止めた。ついに彼女の2階建ての家が顔を出したとき、狂乱したのだった。家の前に停まっている車も、回転する屋根のライトもなく、逆光の窓に座っている警戒中の隣人も、新しく到着した親戚もいない。

 

そこには、灰緑色の塩箱を包むお決まりの葉っぱの闇があるだけで、郊外の静けさに包まれて、何も変わっておらず、何も違っておらず、何も全く動揺していなかった。それから数分間、外に出て、通りの反対側にある木の陰に隠れて、ただ彼女の家を眺めていた。これが単なる見せかけかどうか、彼女の家族の不在の具体的な根拠を探す必要があった。

 

彼女の家の二階には部屋が三室あり、その中の六畳の和室が我々の寝室になっている。二組の布団を敷きいつもそこで寝ている。隣室は明子の寝室だったが、今はもうそこに眠る者はいない。日没後、しばらくしてから僕は彼女のスニーカーを履いて寝室へ上がった。

 

畳の上の布団に、淡い光が投げられている。部屋の隅の方は暗くこちらへ近づくほど、ほのかに明るくなっている。光源は小さな火だ。蠟燭が灯っている。その蠟燭は、洋風の真鍮の燭台に載って、枕元に置いてある。歩道を這うようなゆっくりとした足取りでそっと家に近づき、板張りの玄関通路を少しずつ上がっていった。しかし玄関の鍵はいつも通り鍵で簡単に外れ、玄関にはコートクローゼットが並んでいた。

 

さらに居間では、彼女の母がテレビを見るために座っている低めのソファの前に、ラグが擦り切れて筋だらけになっており、彼女の母がいつも使っている灰皿が、プラスチックでできた金属脚のテーブルの上にいつも置かれていた。

 

物も家具もすべてそのままで、依然と何も変わりはなかった。なぜあるのだろう? 彼女の母は地元の地域病院の夜間看護助手として働いており、週6日、残業が多いため、その静かな家の状況は、完全に常識の範囲内であった。この10年間、彼女の母は何日も顔を合わせることなく過ごしてきた。もちろん時折会うことはあったし、時々、灰皿の中にある彼女のタバコの吸殻や、ソファーの上に広げられた雑誌を意識することもあったし、冷蔵庫はいつも満タンになっていた。

 

しかし、交わることはほぼなかった。人を犯しても何もならないと分かり切っていたからだ。だから、その晩、その瞬間、そこにいて、家の変わらない同じ状態に打たれ、何をしなければならないか悟った。冷蔵庫からオレンジ・ジュースのカートンを取り出し、キッチンカウンターの上、シンクの金属製の縁の上に置いた。そして、ドアをカチッと閉め、涼しく動きやすい暗い明るさのある、閉塞感ではない深さから来る沈黙の中の、なでるような風の中に戻っていった。

 

家は落ち着いて、秩序正しく普通に、つまり家庭の調和が乱れることはなく、この家見事な連続性を示していた。 居間を見回して、ソファーのサイドクッションを一つ取って床に置き、彼女の母が灰皿テーブルの横に座っている場所の真正面に置いた。それからキッチンで、シンクサイドの乾燥ラックから青いプラスチックのグラスを取り出し、カウンターの上に置いたが、ひっくり返って横に傾いていた。

 

そこから去ろうと思ったのだが、しかしその途中で、食器棚からお皿を短く積み上げ、ボウルからリンゴを2個手に取った。リンゴは垂れ下がってズボンを揺らしたが、気に留めなかった。

 

今、好きな場所にいる。そこにある見えないものの一部であり、ない見えないものの一部ではない。だから座って外を見る。そして、座っているところから、静かな景色の中で、絶えず他の人影を見る、絶えず補充される他の人影の連続を見る。他人の家に侵入している自分と他の人影の連続が重なるようにして通り過ぎる車のヘッドライトに照らされ、あるいは頭上のランプの黄色い光に照らされた人物は影に覆われ自己を巻き込波のように立ち波のように、乱れ飛んでいる。

 

そしてそれらを眺めながら、好みの椅子で脛を温めながら、これらの人物のうちどれが彼なのか、このスカスカした塊のうちどれが彼女の動く姿なのかを考える。やがて立ち上がり、家の中を歩き続ける。ただ歩く。次から次に足音を立てて、深い闇の中に次から次に足音を立てて、ただ歩く。永遠に歩く。ただ歩き続ける。歩き続け、無限に走るイメージの連続はただ加速を続ける。誰にも気がつかれない。今日はツイている。

 

性欲を抑えきれずに彼女のスニーカーの味わいではなく、家のディティールと人の影とそれが動く姿を考えながらオナニーした。オナニーでは考えられないほどのオーガズムがあり、尋常じゃない量の精液を射精した。射精後もペニスはギンギンのままで、裏筋が痛くなるほど張りつめていた。

 

「愛の盗賊」というワードが思い浮かんだ。彼女の家から愛を盗んできたに違いない。空き巣が癖になりそうだったので、それ以来、その盗んできた愛をオカズにオナニーしている。あの時盗んできた愛は昨日盗んできたような鮮度を保ったまま、心に居続けている。おかげで空き巣侵入はあれ以来、一切しなくて済むようになった。

 

もしかしたら空き巣侵入が癖になりそうな自分が怖かったので、「愛の盗賊」という意味不明なワードを脳が防衛本能のために生成してきて犯罪者になるのを防いでくれたのかもしれない。ただこれだけは言えるのはその愛をオカズに何度もオナニーできるということだ。たまにAVなどを見て普通のオナニーをしてみようと思っても、盗んできた愛をオカズにするのとでは雲泥の差があると感じる。

 

家のディティールを狂ったように細部を思い出すことでどんどん興奮してくるということに比べると、撮影されたセックスなんてものの価値なんて皆無に等しい。とにかくあの日のオナニーは格別だった。完全な鮮度の愛によるオナニーはセックスに優るものだと認識した最高の夜だった。

 

路面電車の中でも、バスの中でも、電車の中でも、メアリーとアンという二人のハウス&パーラーのメイドは、互いの体験から切り離された独自の世界に存在していた。「あなたがやったんじゃない」私は三郎を責めたが、彼の膨らんだ腹は違うことを物語っていた。

 

混乱の中、三郎の変貌が私たちの理解を超えてエスカレートしていくのを見ながら、私は「これもまた過去の繰り返しだ!」と思い直した。タマネギとペパーミントを交互に食べるメアリーの世界は、私たちの苦境とは対照的だった。

 

「ディー... 何これ、怖い!」

 

目の前で繰り広げられる不条理に圧倒され、ディーオンがパニックになると、パリスが叫んだ。

 

「なんとかしないと!」

 

ポニーは、ディーオンの無秩序な膨張を目の当たりにし、絶望に打ちひしがれた。一方、メアリーの飽くなき食欲や、玉ねぎとペパーミントを交互に食べることに執着する姿に象徴されるように、庶民の苦境は、現在の混乱に比べれば遠い現実のように思えた。

 

「ポニー!ポニガール!」

 

ディーオンは困惑しながら、三郎の不可解な返答の意味を理解しようと必死に繰り返した。ディーオンは決意を固め、三郎と向き合った。その目は、くしゃみと奇妙な行動の背後にある説明を探していた。

 

「ディーオン、何があったのか教えてくれ」

 

と促したが、彼の返事は腹を膨らませ、困惑の表情を浮かべるだけだった。ポニーは理性の代弁者になろうと

 

「正直に言っていいんだよ、ディーオン」

 

と口を挟んだ。奇妙な状態に包まれたディーオンは、私たち一人一人を見た。その目は、私たち異常な家庭の当惑を映し出していた。しかし、ディーオンは本当に予測不可能なプレーの、公正だけでは、ルールだけではね、おそらく目に見えないパスにあまり知っている目よりも私のものに言うことである。しかし、時々、彼らはそうではありませんと言うし、所有に関してもなんていうか、私のものですか?彼らはおそらく揺るぎなく、固定され、原因の彼らの不安定さの私の発作的な知覚、とでも言うのかね、

 

私はちょうど台所で奇妙な味噌汁の中で生活していたところで、誰も入ってきて欲しくなかったので、お互いに座布団を掴み合っていた。彼女はとても儚げで、それ以上に親しくなることができた。誰かと一緒にいると、とても疲れるんだ。そう彼女は時折、彼の部屋を訪れて、ここで話した。

 

しかし、私は本当に夢中になっているのだろうか?わからない。別の方法を試してみよう。ある日、すでに存在する無秩序の原理から生じる変化が起こったとしたら、それは何だろう?そうした理由から私はちょっとした見世物になっていた。私の感情が激しく揺れ動くんです、私はこの男に完全に振り回されているようなものではないはずだった。大学生にもなって、こんな気の利いたことが言えるものなのかと驚いた。彼女は私より1つ年上だったが、まったく、ジーザス、この人に彼女はいるのだろうか、なぜ叫び声のことを言うのか?何かが壊れたのか?2つのものがぶつかったのか?ここでは時々、音がする。

 

「僕は盗聴器を知っている」とでも言うように、一方で良いこともあって、オシャレなレストランでないところが良かったのと、何か変な子が引っ越してきたような気がして、無言で見に来た。